2020年のオリンピック招致に成功した東京ですが、その要因の1つに、滝川クリステルさんのプレゼンを挙げる人も少なくないでしょう。フランス語でのプレゼン中に日本語で表現し、話題になった「おもてなし」という言葉。日本人なら当然、よく耳にする言葉ではありますが、日常生活で使う場面は、あまり多くないかもしれません。この「おもてなし」という言葉について、関西大学文学部国語国文学専修の乾善彦氏に解説してもらいました。

語源をたどると

 「『おもてなし』という言葉は、動詞『もてなす』の連用形名詞『もてなし』に美化語(丁寧語)の接頭辞『お』がついたものになります」と乾氏は説明します。

 「もてなす」という言葉は、「そのように扱う」、「そのようにする」などの意味の「なす(成)」に、接頭語「もて」がついたもの。「もて」の付く語には他に「もてさわぐ」、「てあつかふ」、「もてかくす」などがあり、動詞に付属して「意識的に物事を行う、特に強調する意味を添える」のだそうです。つまり「もてなす」は「扱う」ことを強調する場合に使う言葉、ということになります。

そもそもの意味は

 接頭語「もて」の語源ですが、小学館『日本国語大辞典(第二版)』によると、漢語「以」の訓読に使われる「もちて」が変化して「もて」となったものと考えるのがよい、とされています。すなわち「なす」に、「もて」を強調の意として接続し「もてなす」となり、それに美化語の「お」をつけて名詞となったものが「おもてなし」ということです。

 そもそもの意味は「とりなす、処置する」、「取り扱う、待遇する」というもので、現代のように接待に関して用いられるのは中世以降になってからだそうです。

なぜ日本語で?

 ちなみに、英語では、「hospitality」、フランス語では「accueil」などが、「おもてなし」にあたる言葉と考えられますが、今回、滝川クリステルさんが、フランス語のプレゼンで、あえて日本語で表現しました。これについて乾氏は「日本独特の接待の仕方を強調するために、外国語に翻訳すると失われかねない、何か特別なことがあることを強調して、なにか期待させる効果を狙ったものと思います」と分析。その思惑どおり、滝川クリステルさんのプレゼンは、多くの人の心をつかんだのではないでしょうか。

■乾善彦(いぬい・よしひこ)関西大学 文学部 総合人文学科 国語国文学専修 教授。大阪市立大学文学部卒業。大阪市立大学 博士課程 文学研究科卒。