動画をもっと見る

 車いすに座ったままでも身につけることができる振り袖やはかまを、愛知県春日井市を拠点に和装レンタルや婚礼ヘアメークなどを手がける「はなよめ工房」がこのほど、開発した。一般的に着物の着付けは「立って行う」ことが基本のため、車いす利用者や寝たきり状態の障害者は、和装をあきらめることがほとんどだった。発案した中島明子さん(43)は「どんな人でもきれいにしたい」と、着物のバリアフリー化を進める。

【拡大写真入りの記事】車いすに座ったままで着物を 愛知の和装レンタル会社が開発

きっかけはラジオから聴こえた恋愛話

[写真]「どんな人でもきれいにしたい」と車いす利用者用はかまを手にする中島さん(愛知県春日井市で)

 開発した着物は、上下分割のタイプ。上部は腕を通すだけの仕様で、下部はエプロンのように前から覆う。ポイントは面ファスナーを活用して、胴や胸のあたりの帯に着物を固定させて、着崩れを防ぐ。着付けは1人で行い5~10分で完了。着物を通常通り着付けたように見せることができる。現在、振り袖やはかま、留め袖を30着ほど仕上げた。

 車いす利用者用着物の開発が始まったのは、今から2年ほど前。中島さんが障害者のカップルが出演するラジオ番組を聞いた時のことだった。婚礼ヘアメークの仕事をしていたこともあって、聴こえてくる恋愛話からふと考えた。「車いすを使う人が結婚式を挙げる場合、着物はどうやって着るのだろう」と。

 知人やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて意見を聞いてみると、重度障害がある人は「大変だから着物を着るという選択肢がない」との現状を知る。一方、その保護者は「着物を着る機会があれば、着させたい」という親心を抱く現実もあった。それ以降、車いす利用者用着物を作り始め、白無垢(むく)や、はかま、留め袖、振り袖を完成させた。

試作や試着を重ねて意見を反映

[写真]開発された車いす利用者用振り袖を着用するモデル(愛知県春日井市で)

 制作時は車いす利用者の女性にモデルを頼み、試作や試着を重ねて意見を反映。実際に成人祝いの際に着用したという手足にまひがある女性からは「振り袖を着ることをあきらめていた。まさか着ることができるなんて」と、喜びの声が届いた。

 車いす利用者用着物を手がけるにあたり「ビジネスになるのか」と、周囲から疑問の声も上がったという。実際、着物の制作は特注扱いとなり、コストがかかる。そこで、中島さんは自分でできる部分は自ら加工。その結果、レンタル料金は通常の着物とほぼ同じくらいに設定することができた。「成人式などお祝いの時には、着物を着たいという人は多い。そういう当たり前な事ができるように、していきたい」と、希望を語った。
(斉藤理/MOTIVA)