制度見直しを求める市長への嘆願書の一部。不安を抱える保護者の思いがストレートな表現で書かれている(名古屋市熱田区で)

 先生が辞めて、施設がなくなってしまったらどうしよう ── 。名古屋市の障害児向け民間通所支援施設である児童発達支援センターに子どもを通わせる保護者から、不安の声が上がっている。

 市は2015年度から、同センターの人件費に充てられてきた市独自の補助金制度について、財政難を理由に補助額の設定方式を変更。子どもの出席率が市の設定より低い場合、給付額が減り、足りない分は施設側が負担する仕組みになった。この結果、負担増の施設では、存続が厳しくなるという見方が出てきて、保護者らに動揺が広がっている。

国の給付金不足分に対する市独自の補助金 年間1.5億円の負担、財政難で見直し対象に

 児童発達支援センターは、身体や知的などに障害がある2~5歳児が、日常生活の基本的動作の指導や知識、技能の訓練などに取り組む通所施設。障害児の親などからの相談にも応じている。名古屋市内には10カ所あり、そのうち民営は5カ所だ。

 同センターには、国から子どもの出席人数に応じて給付金が支払われていて、子ども4人に対し、職員1人の配置という考えで金額を設定している。一方、市は市民サービス向上と、民間職員と市職員との賃金格差を是正するため、子ども3人に対し、職員1人の配置ができるように、独自の補給金制度「運営費補給金」を設け、国の給付金で足らない分を補ってきた。同センターはこれらの給付で、保育士らの給与など人件費を賄ってきた。

 ところが、この制度に必要な年間予算は、1億5千万円ほどかかる。市財政の見直しと、他の自治体が同様の補助金を廃止している現状も踏まえ、15年度から段階的に補給金を減らす制度に変更した。

障害児に高い出席率を求めることは困難…市が設定したみなし出席率に保護者からはとまどい

障害がある2~5歳児が通う発達センターあつた(名古屋市熱田区で)

 要点になるのは、市が決めた「みなし出席率」。子どもの出欠に関係なく、15年度は82%、16年度は85%、17年度は88%とした。

 16年度を例に挙げると、子どもの出席率が80%にとどまった場合、出席人数で決まる国の給付金は、実績に合わせ、施設に対し、80%分が支払われる。従来はその不足分20%を市が独自の補助金で全額まかなってきたが、みなし出席率85%の計算では、市はみなし出席率による不足分15%までを補助することに。国給付金(80%)と市補給金(15%)を合わせても95%となり、人件費総額(100%)の5%が足りない。この5%不足分が、施設側の負担となる。

 市内に10カ所あるセンターのうち、民間施設は5カ所。そのうちの1つ、発達センターあつた(同市熱田区)では、年間の人件費に約1億円かかるが、新制度が始まった15年度の出席率は77%で、同年度に設定されたみなし出席率82%に5%足らず、約400万円を負担することになった。

 施設の苦しい現状を知った親たちは、困惑の表情を浮かべる。同所に通う児童の保護者で作る会代表の女性(35)は「障害がある子の出席率を高くキープするのは難しい。補助が減って先生が辞めて施設が無くなったら困る」と嘆いた。制度改善を求めて市長への嘆願書を集める活動もしたという。

 安藤典明園長(60)は「名古屋の療育の質を高めるための補給金制度だが、見直しによって質の低下になってしまう」と話した。