西尾市職員、同市議を経て6月に初当選した中村健市長

 愛知県南西部の西尾市は、世界的に知られる「西尾の抹茶」や全国シェアの高い「一色産うなぎ」の産地。そんな産業と歴史を誇る街が、少子高齢化を見据えた公共施設の統廃合をめぐって大きく揺れています。

 2011年に周辺3町(一色町、吉良町、幡豆町)と合併後、重複した役場機能の集約や公民館の建て替えなどを検討。全体計画をつくった上で、施設の建設に民間の力を活用する「PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)」の導入を決めました。

 しかし、その内容は最長30年間にわたる公共施設の新築や改修、維持管理を民間の特別目的会社(SPC)1社に任せるという全国でも例のない大胆な案。当初は「30年間で327億円をかけ、約40施設の新設や改修、解体を進める」としていました。

 しかし、中にはスケートボード場やフィットネスクラブなど、大多数の市民が求めているとは言いがたい施設も含まれ、賛否が噴出。市は批判を受けて「15年間(ただし一部業務)、約198億円、31施設」と規模を縮小したものの、市民の不安や反発は収まりません。

 市とSPCの業者が契約を交わしてから約1年が経った今年6月、「PFIの凍結、全面見直し」を訴えて中村健市議(38)が市長選に立候補。PFIを推進してきた現職の榊原康正市長(77)を破って初当選を果たしました。

 中村新市長は就任後、さっそくPFI事業の中断を業者に通知します。しかし、業者は「事業中断後の将来的な方針が市から示されていない」などとして、期限までに工事を止めていません。

 人口減少時代のまちづくりは誰に、どうやって任せればいいのか ── 。中村市長に混迷の打開策と将来の展望を聞きました。

「PFI」は財政状況変化に対応できない―中村健・愛知県西尾市長に聞く(下)

30年間、300億円の事業に応募1社

PFI事業に対する市民の反発は徐々に強まり、2016年5月に「白紙撤回」を求める市民集会が開かれた

── 今回のPFIの問題点はどこにあると考えたのでしょうか。

合併後の1市3町で機能が重複している公共施設を統廃合しようという方向性、総量の圧縮や経費削減の手法としてPFIが一つの選択肢であること自体は否定していません。

今回の「西尾市方式PFI」は単独の事業でなく、いくつもの事業を包括的に発注していることが大きな特徴の一つ。事業者の募集条件は、愛知県内に本社や本店を置く企業に絞りました。その結果、2015年3月から12月までの募集期間で1社しか応募がありませんでした。

 ※西尾市は今回のPFI事業の基となる「公共施設再配置基本計画」を2012年に策定しています。その基本方針は以下の3つです。

 「人口減少に伴って機能を維持する方策を講じながら、公共施設の保有総量を段階的に圧縮するため、原則として新たな公共施設は建設しない。ただし、政策上、新たな公共施設の建設を計画した場合、既存施設の廃止を進めることで、施設の保有総量の抑制を図るものとする」

 「現有の公共施設が更新(建替)時期を迎える場合、機能の優先順位に基づき施設維持の可否を決め、優先度の低い施設は原則として、すべて統廃合を検討する」

 「公共施設のマネジメントを一元化して、市民と共に公共施設再配置を推進する」

 この方針に基づき、具体的な企画提案を民間業者から募集。その際、建設・不動産会社ではない地元企業が代表となり、地域密着した事業を求める「サービスプロバイダ方式」という手法を採用することにしました。結果的に、西尾市内でスイミングクラブなどを経営する会社が中心となった「エリアプラン西尾」というSPC1社のみが応募し、契約が交わされました。※

これだけの大きなプロジェクトをするのに、県内の企業だけでよかったのか、1社だけなら競争原理が働かないではないかと、議員として議会でも発言をしてきました。しかし、議会に正式な議題としてかかるのは債務負担行為と契約案件程度。しかも当初の約327億円という事業費の根拠については、大ざっぱに説明はありましたが、詳細は分からないことだらけでした。

契約の段階まで来ても、情報はクローズドなまま。当時は、契約が終われば情報はどんどん公開すると市側も言っていましたが、契約後も市の姿勢が前向きになったとは思えませんでした。情報が出せない理由の多くは、民間側の許可が得られなかったから。100%公開はできないのでしょうが、税金を使った事業に対して、資料の提出や議会で尋ねても「言えない」ということが頻繁にありました。そんな中で賛否の議決をすることが、議会制民主主義の観点からも疑問でした。

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