かつてはいろんな家や事業所などでまつられていた神棚。住まいの形態も変わり、今は保有率3割弱だという(2012年、第一生命経済研究所調べ)。その神棚に欠かせないのが一対の榊(サカキ)だ。

 その榊に対して、生花のフラワーアレンジメントなどを長持ちさせる際に用いる特殊なプリザーブド処理を施した「プリザーブド本榊」が愛知県で誕生した。神棚を持つ家が減りつつある中、榊をなぜ開発したのだろうか。

愛知県の研究機関と開発

神棚に供えられた開発品のプリザーブド本榊(提供:あいち産業科学技術総合センター産業技術センター)

 開発したのは、愛知県の研究機関、あいち産業科学技術総合センター産業技術センター(刈谷市)と、プリザーブド仏花製造会社の菊水(同県春日井市)。同社が昨年末の2017年12月に「樹王さとの神」という名称で、自社特設サイトで販売開始したところ、神棚の管理が簡単になると、同社には購入や取り次ぎに関する問い合わせが相次いでいるという。

 神棚は、地域で本榊やヒサカキの違いはあるが、生の榊一対(2束)を供え、毎月1日と15日に新しい榊に換える慣わしのところが多い。また枯れてきたら交換しなくてはいけない。しかし、核家族化や夫婦共働き、高齢化などで、生の榊を飾りたいのに、水替えなどの管理が頻繁にできないという理由から、やむなくポリエステルなどでできた造りものの榊を飾る家庭も少なくなかった。

短期間で葉が反る、葉落ちする、独特なにおい……従来品の問題を改善

研究したプリザーブド処理技術について語る野村昌樹さん(愛知県刈谷市で)

 手間をかけず本物の榊を飾りたい ── 。そんなニーズに応えようと、同社は生花などを保存加工する特殊なプリザーブド処理による製品化に乗り出した。

 プリザーブド処理は、生花や葉を特殊な処理液に漬けたあとに乾燥する手法で、着色処理も行うことが多い。すでに、本榊のほか、ヒサカキに処理を施した商品もあったが、乾燥した環境下では、短期間で葉が反ったり、柔軟性が失われて葉落ちしたりする点や、葉の処理液から漂う独特なにおいも問題となっていた。

 同社は、仏花のプリザーブド処理で培った技術を本榊で試したが、こうした従来品以上の耐久性や美観を保つことができなかった。そこで2016年9月に、同センターへ技術相談に訪れたことがきっかけとなり、共同開発が始まった。

 研究を担当した同センターの野村昌樹さん(36)は「本榊の葉は分厚く硬いため、葉に浸透させるために最適な液の配合が難しかった」と振り返る。同社の処理技術を元に、処理液の配合を見直して繰り返し試験を実施し、新技術誕生へとつながった。

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