名古屋市内で2月19日から、複数の利用者が1台のタクシーに乗る「相乗りタクシー」実証実験が行われている。東京は1月24日から国土交通省主導で行っているが、名古屋はタクシー事業者の発案で実施した。なぜ独自に実施したのか。

相乗り成立で最大4割程度割り引き

拠点から相乗りタクシー実証実験をスタートさせる対象車両。フロント右側に「乗合」の表示がある(名古屋市中区で)

 東京の実験は、国土交通省が予算をつけてタクシー事業者に実験参加を呼び掛け、それに応じたタクシー会社グループ2社の計949台が参加して行われている。一方、名古屋の実験は、タクシー会社や自治体、学識経験者などでつくる名古屋交通圏タクシー活性化協議会が、同省中部運輸局に運行許可を申請して実験を行うという“民間主導型”。つばめタクシーグループ5社の計30台が参加している。

 相乗りのためのシステムも東京と異なり、専用サイトや電話で配車予約をした客の乗車希望位置と、タクシーの現在地、同じ方向に向かう利用希望者の情報を人工知能(AI)が分析し、配車される。相乗りがうまく成立すると、最大4割程度乗車料金が割り引かれる。

 また東京の場合は、相乗り希望者がタイミング良くそろわないと配車予約はできないが、名古屋は相乗り希望で予約しておいて、他に相乗り希望者がいなかった場合でも単独利用として、希望の時間に配車される。ただし相乗り客がいなかった場合は「乗合なし」の運行となり、料金割引もない。

 利用するAIシステムは、公立はこだて未来大学発ベンチャーの「未来シェア」(北海道函館市)が開発して提供。5年ほど前に基本システムを作り上げ、小規模の実験を重ねてきた。タクシーの新サービス創造を思案する同協議会と、システム向上のために初めて乗客有料の形で実験を模索していた未来シェアの両者の思惑が一致し、実現した。

タクシー利用客数減、海外ライドシェアの動きへの警戒が背景

相乗りタクシーの目印となる「乗合」表示を取り付ける運転手(名古屋市中区で)

 名古屋独自で実験を行う理由について同協議会は「たとえば病院の行き帰りでタクシーを使う人が、単独乗車よりも安くタクシーに乗ることができるというような、地方の新たなタクシーサービスの考えの一つが相乗り方式。東京ではなく、地方で新しいサービスを実験することに大きな意義がある」と強調する。

 背景には、タクシーの利用客数減少がある。名古屋市内の企業から提出された事業実績報告書によると、2015年度のタクシー・ハイヤー(法人・個人)乗車人員数は約4249万人、乗車料収入は約452億円。グラフは右肩下がりで減少傾向が続いており、2011年度と比べていずれも5%減となった(国土交通省中部運輸局愛知運輸支局データ)。

 海外で新たな動きが起こっていることへの警戒感もある。日本は道路運送法により、タクシーの相乗りは原則禁止。一方海外では、自家用車で乗客を有料で運ぶ「ウーバープール」(米国)などの「ライドシェア」(自家用車の相乗り)サービスが広まる動きがある。タクシー業界にはライドシェアが日本でも解禁される流れへの警戒感があり、タクシーの新しい価値創造が課題となっている。

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