そのカギ。投手コーチのクリス・ボジオは、「真っすぐ次第」と、敢えて藤川を試すような言い方をする。

 しかしその裏には、根拠があった。「あの球は、メジャーの打者でも簡単には打てないよ」。

 キャンプ序盤、ボジオ投手コーチは藤川のライジングファストボールに目を見張った。

 「あれは、メジャーの投手でもなかなか投げられない」メジャーには、ライジングファストボールを証明する指標(バーティカル・ムーブメント)がある。実際に浮き上がることはないが、どれだけ落ちないかを、無回転のボールが捕手のミットに収まる位置を基準に、プラス(上)かマイナス(下)をインチで表す。

 プラスの数値が高ければ高いほど、ボールが落ちてこない――打者にしてみれば、伸びているように見えるが、オープン戦の藤川の平均は12.34インチ(31.34センチ)だった。現在(5月7日現在)のリーグトップはグレッグ・ホランドの13.0インチ(33.02センチ)で、12.34インチは現在、リーグ5位に相当する。

レッドソックスの上原は、11.6インチ(リーグ22位の数字)あって、89マイル表示のストレートで空振り三振が取れる理由はそこにある。岩隈のバーティカル・ムーブメントの数値も去年のそれより倍くらいになっていて、それが今季の好成績の理由の1つだ。

 ボジオ投手コーチは、オープン戦で彼が相手打線を圧倒したのは、そこに大きな要因があると考えていた。

 しかし、この藤川の数字が、開幕に入ってから落ちた。1試合目から順に10.30インチ、9.25インチ、10.82インチ、11.46インチ、11.89インチと、一度も12インチ(30.48センチ)以上を記録していない。

 昨年のリーグ平均は8.3インチで、それに比べれば高いが、それでもオープン戦の頃は12インチを越えていただけに、言うなれば藤川の真っすぐは開幕に入ってから、伸びを欠いたことになる。

 あのキレが戻れば――。ボジオ投手コーチはそう考える。

 問題はそれがケガに起因するものなのか、他に要素があるのか、だ。まずは、復帰してからバーティカル・ムーブメントがどの程度の数字を記録するのか。ストレートの球威というより、その数値に注目したい。

           (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)

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