2013年のWBCに参加した侍ジャパンの監督、コーチによる親睦会が、つい先日、この土日を跨いで名古屋で行われた。メンバーが東西に散らばっているため、打撃コーチを務めた中日ドラゴンズOBの立浪和義さんが幹事になって、中間地点の名古屋で開催されたものでゴルフやパーティで旧交を暖めた。高代延博さんが、WBCを総括した話題の著著「侍ジャパンの死角」(角川書店)も、ちょうど18日に発売。その会の盛り上げに一役買った。準決勝でプエルトリコに敗れたサンフランシスコの戦いについては、その後、賛否渦巻いたが、大会期間中、連日のようにホテルの監督の部屋に集まって議論していた7人のスタッフの結束は、3か月を経過しても変わっていなかった。

 WBCで監督を務めた山本浩二氏は「わしは、まず侍ジャパンのメンバーの結果を毎日、チェックしている。気になってしょうがない。今は、敵味方になっているが、打ってくれ、抑えてくれと。WBC組の調子が、ここにきても、まだもうひとつ上がらんのが心配や。相当の疲れがあったんやろうな」と、侍ジャパンの出場メンバーの動向を気にかけていたという。ヘッドコーチの梨田昌孝さん、投手コーチの東尾修さん、与田剛さん、外野守備コーチの緒方耕一さんと、集まったメンバーのほぼ全員が同じ思いだった。

 シーズンが開幕するとWBC出場メンバーは、好調組と不振組に真っ二つに別れてしまったのだ。では、なぜ彼らは、明暗を分けることになってしまったのか。

 まず、野手のレギュラー組から見ると、稲葉(打率.194)、井端(打率.220)の2人を筆頭に本多(打率.251)、長野(打率.236)らの不振が目立つ。稲葉は、途中2軍行きを志願したほどで井端もスタメン落ちの屈辱を味わった。本多も故障で戦線を離脱した。

 逆に好調組は、阿部(打率.277、16本、49打点)、坂本(打率.294、6本塁打、29打点)、中田(打率.326、17本、44打点)、内川(打率.333、8本塁打、38打点)、糸井(打率.310、7本塁打、25打点)らだ。

 高代さんは、「WBC組の一部が今シーズン不調に陥っている原因は、間違いなく大会の心身共の疲労とモチベーションの問題だと思う。WBCで一度、極限まで持ち上げた気持ちを国内の開幕に再び合わせるのは難しい。終わってホッとした気持ちと、まして負けているから脱力感もある。その状態のまま試合で結果が出なくなると技術のメカニズムも狂ってくるもの。不振組は、その不調を取り戻せないでいるのかもしれない。また国際試合はインサイドを攻めてこない。国内では、そこを使ってくるので、若干、その調整に戸惑いが生まれてのかもしれない。結果を出せている選手は、逆にWBCで何かを得た選手と、元々高い技術力を持っている選手。中田は立浪の指導を受けて途中で拒否したりもしたが、自分で考えることを覚えたと思う。内川ら元々技術のある選手は、さらにその技術の精度が増したし、負けた悔しさがシーズンへの糧になったのだろう」と見ている。

 投手陣を見ると、攝津が6勝しながらリタイア、マエケンも何度か体に不調を訴えローテーションを飛ばすなどコンディションを崩す投手が続出した。NPBの統一球とは違うWBC球を使ったことと、肩の仕上がりを1か月早めたことによる肉体への負担が影響しているのは間違いない。能見もそう。森福は、ついに調子が上がらずに登録を外れた。牧田も4つの負けは好不調のムラが原因だろう。

 逆に好調組の代表は、無傷の9連勝中の田中将大。巨人の杉内、内海、澤村も、ここにきて状態が上向きになりつつある。WBCでは不振だったメンバーが、シーズンに入った途端に逆に復調を遂げている。

 「間違いなく、あの悔しさが肥やしになっていると思うんです。マー君などはWBCで必要性を感じた緩いカーブや、攻めることのできなかったインサイドのボールをシーズンでは上手く使っている。配球が変わったと相手打線に考えさせるだけで、マー君がひとつ有利になるんです。内海もそうでしょう」と高代さん。

 ただ、投手コーチを務めていた与田さんに言わせると、マー君はアメリカに行ったあたりから確実に右肩上がりに調子を上げていて、「フォームのバランスが崩れていたんです。微修正もできてきたので、決勝戦で投げるのが本当に楽しみでした。あの状態ならドミニカに通用したと思うんです。シーズンインしてから好調ですが、僕は、WBCの流れからして、こうなることを予期していました」ということらしい。

 交流戦も終了して、21日から同一リーグでのペナントレースが再開する。今のところ明暗を分けている侍ジャパンのメンバーが、どんな戦いを見せてくれるのか。2013年のWBCを戦った監督、コーチで作った親睦会「7人の侍」が抱く心配は、まだまだ解消されそうにない。
(文責・本郷陽一/論スポ)