日本原子力発電が運営する敦賀原発  (photo by Hirorinmasa)

 日本原子力発電(日本原電)は7月16日、原子力規制委員会に対して行政不服審査法に基づく異議申し立てを行った。原子力規制委員会は日本原電に対して、敦賀原発2号機の直下にある活断層が使用済燃料プールに与える影響を評価するよう命じていたが、日本原電側は当該部分は活断層ではなく、規制委員会の判断には重大な誤りがあると主張している。

 日本原電によれば、断層の構造や他の地層への影響度合いなどから、敦賀原発直下にある断層は活断層ではないという。また活断層であると断定した原子力規制委員会の有識者委員会は4名の専門家しかおらず、うち3名が同一分野の専門家となっており、人選が偏っていると主張している。日本原電は規制委員会の命令は違法であり、直ちに取り消すよう求めている。

【図解】原子力発電の割合はどれくらい?

科学的に白黒を付けにくい

 不服申し立ての結果がどうなるのは現時点では分からないが、科学的には、両者の主張には一定の根拠があり、一概にどちらが正しいと決めることは難しいとの声が多い。むしろ問題なのは、科学的に白黒を付けにくい問題が、事実上原発の再稼働の可否を決定する要件になっており、重大な判断が一部の専門家による会合のみで決定されつつあるという事実である。
 
 もともと原発の下に活断層(と解釈可能な断層)が数多く存在していることは、原発の建設前から分かっていたことである。原発の建設ラッシュとなっていた1970年代には、原発建設をめぐって各地で反対運動が起こっていたが、その際にも活断層については何度も議論された。結局のところ、耐震上問題のある活断層は存在せず、仮に大地震が起こっても耐震性は確保されるので、断層の存在はそれほど重大な問題ではないという前提で原発建設が進められてきた。

活断層だけを取り上げることの整合性は

 もし本当に活断層の存在が重大な問題であるならば、100%活断層とは断定できない断層についてもその危険性を検討する必要が出てくる。また活断層を問題視するということは耐震性について問題視していることと同義であり、現実に活断層以外の場所で大地震が発生するケースが多いことを考えると、活断層だけを取り上げることは論理的整合性を欠く。

 結局のところ、確率は極めて低いが事故発生時には重大な影響を及ぼす原発のような施設については、確率の数字をいじくり回してもほとんど意味はない。最後は国民が決断する以外に意思決定する方法はないのだ。

 日本の原子力開発は、欧州や米国と異なり、国民的な議論を行わないまま、原子力の専門家による技術的解釈と政治利権のみで導入が進められてきた。原子力政策をめぐって、何度も推進と凍結を繰り返した欧州や、激論の末、核燃料サイクルの導入を当初の段階で放棄した米国とはだいぶ状況が異なっている。 

 今回の再稼働に際して国民的な議論を経ず、活断層の解釈という些末な技術論だけで、再稼働が決定されるという事態になれば、日本は大事故から何も学んでいないということになる。

(ニュースの教科書)


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