米アマゾンが先月末に電子書籍リーダー「Kindle」の最新モデル「Kindle Fire HDX」を発表しました。「Kindle」シリーズはこれまでに日本でも発売され、楽天の「kobo」などとともに電子書籍リーダーの主要モデルとなっています。しかし電子書籍は、日本では期待ほど定着していないようです。電子書籍が普及するための課題としては、コンテンツの少なさ、ハード面での不満などが指摘されています。電子書籍が抱える課題と今後について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの太下義之氏に聞きました。

 太下氏は、昨今の電子書籍と出版業界を取り巻く状況が、1980年代にレコードからCDへの転換、そして2000年代前半にCDから音楽配信への転換という2つの大きなデジタル化の波を経験した音楽業界と似ていると指摘します。そして出版業界は、音楽の事例から学べることがあるのではないかと言います。

音楽のデジタル化から学べること

――――電子書籍は広く普及しているように見えませんが。
 現状はそこまで普及しているとはいえない状況です。しかし、デジタル化の流れは出版業界でも避けられないので、音楽のときよりは緩やかなスピードですが、確実に浸透していくと思います。実際には、本をデジタルで読むという習慣が定着するまでには、一世代以上の時間(20~30年)がかかるのではないかと考えています。

――――普及するためには何が必要でしょうか?
 音楽のデジタル化は、音楽共有サービス「ナップスター」などの音楽配信の登場以前にも、1980年代にCDへの転換という形で進んでいました。つまり、デジタル化した音楽をパッケージで届けるか、ネットを通じたファイルで提供するかのチャンネルの差の話でした。しかし、電子書籍の場合は、基本的にデータはまだ電子化されていない状態。そこが音楽とは決定的に違う状況です。

 2000年代前半にナップスターが人気を博し、その後、アップルの「iTunes」などが登場しましたが、当初はiTunesでダウンロードした曲は他のデバイスでは聴くことができないようなクローズな状況でした。その後、だんだん縛りがとれてきて、アップルもDRM(デジタル著作権管理)を外すなどオープン化が進んできています。音楽業界では、紆余曲折ありながらも本来のあるべき姿に進んできました。

 翻って電子書籍を見てみると、現在は「規格」が乱立しています。何らかの統一規格のようになって、購入した電子書籍をどのリーダーでも読めるようにならないと、普及は難しいでしょう。現在はKindleでダウンロードしたらKindle、koboでダウンロードしたらkoboでしか読めない。これはユーザーにとって非常に不便です。リアルな本だったら一度買ってしまえば、どこへでも持っていけます。どこのストアで買っても、どこのリーダーでも読めるという状況にならないと、リアルな本と対抗できないのではないでしょうか。

――――音楽業界の例から学べることは何ですか?
 現在の音楽業界は、音楽配信のデファクトスタンダードをアップルに握られている状態です。この例を見るに、今後、出版業界以外の産業が電子書籍のデファクトスタンダードを確立していく可能性があります。出版業界は、電子書籍の動向に積極的に関与して、仕組み作りの主導権を握るのが理想的だと思います。

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