熊本県で開かれる国際会議で10日、「水銀に関する水俣条約」が採択される見通しです。水俣という日本の地名が付けられていますが、水銀の問題は、水俣だけの問題ではありません。世界に目を向けてみると、各国が取り組まなければならない国際問題であることが分かります。どのような問題があるのでしょうか?

条約の交渉と合意を支えた水俣病の被害

「水銀に関する水俣条約」は、単に「水俣条約」や「水銀条約」とも呼ばれます。1956年に熊本県の水俣市で水銀による中毒症状が初めて確認されたことにちなんでおり、有毒な水銀の使用や排出を世界的に規制しようという内容が盛り込まれています。

水俣病は、海に流れだした水銀により、汚染された魚を食べることによって手足がしびれたり、自由に手足が動かせなくなったり、視野が狭くなったりする症状が出ました。国内で被害を受けた人たちは数万人にのぼるとされています。

このような水俣病の被害の実態は「諸国に水銀のリスクを認識させ、水銀条約の交渉と合意を支えてきた」と言われています。このため、条約の前文には「水銀汚染による健康や環境への深刻な影響、公害の再発防止」といった水俣病の教訓に関する記述が盛り込まれる予定です。

金採掘で使われる水銀と子どもたち

[写真]大人が金の生産に関わる傍ら、水銀に汚染された水たまりで遊ぶタンザニアの女の子(写真提供:ヒューマン・ライツ・ウォッチ)

世界に目を向けてみましょう、数千万人が水銀の被害に遭っていると言われています。

主に金の採掘に水銀が使われている地域です。金の鉱石に水銀を加えると、水銀は金を吸収して「金アマルガム」という合金になります。この合金を燃やすと、水銀だけが蒸発して金が残ります。この方法は、金を抽出する安くて簡単な方法として世界の小さな金の採掘現場で使われています。

国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチによると、アフリカやアジア、中南米において、1000〜1500万人が小規模の金の採掘に携わっています。こうした採掘に関わる人たちは、水銀の蒸気にさらされるなどして、健康を損なっていると言われています。しかも、採掘の現場では子どもたちが動員されている現実もあります。

マリとタンザニアの鉱山では、子どもたちが金鉱石と水銀を素手でかき混ぜ、水銀の蒸気を直接吸い込んでいるのが何度も目撃されています。

条約に参加する国々は、小規模の金採掘について、国家計画に基づいて縮減しなければなりません。しかし、水銀を使わない方法はお金がかかります。そのため、途上国への資金援助や技術支援を行うことが盛り込まれる予定です。

同団体は、この条約を「歴史的進歩」と評価する一方で、条約が児童労働の問題について触れていない点や、小規模採掘の縮減に期限を設けなかった点を問題視しています。