[写真]武装対立などの影響下にある地域での医療援助(イエメン) (c)Saoussen Ben Cheikh/MSF

海外の紛争地や被災地のニュースが伝えられると、たびたび「国境なき医師団」(MSF)という言葉を目にします。病気で苦しんでいたり、傷ついた人たちを助けたりする医師のグループということは想像できますが、どんな特徴のある組織なのでしょうか?

1971年にフランスの医師らのグループによって作られた人道援助団体です。国連の関連組織と思われることもありますが、実際は国連とは関係のない100%民間の団体です。活動資金の大半は、個人や法人からの寄付金です。政府からの金銭的な援助があると、すぐに医師を派遣したい国があるのに、政治的な意図によって活動地や活動内容が左右されたり、現地の紛争当事者に受け入れてもらえないおそれがあったりするためです。

[写真]ハイチ・シテソレイユのMSFのエアテント式仮設病院 (c)Yann Libessart/MSF

活動は世界中に及んでいます。オランダ、スイス、スペイン、フランス、ベルギーをはじめ、アメリカやインド、香港、日本など世界中に28の拠点があります。2012年は現地スタッフも合わせ、約3万5000人がアフガニスタンやシリアなど72か国で活動しました。

「国境なき医師団」の活動を特徴づけているのは「医療活動」と「証言活動」の2つです。

「医療活動」は、緊急援助を専門としています。世界中のどこにでも48時間以内にチームを展開する機動力があり、エアテントで無菌の手術室を備えた病院を設置することもできます。医師だけでなく、活動する医師らを支えるため、現地で飲み水を確保したり、物資の調達を行ったりするスタッフもいます。

「証言活動」は、いわば広報活動ですが、自分たちの団体をPRすることだけが仕事ではありません。活動地では、虐殺など、多くの人命を危機にさらす見過ごせない事態を目撃することもあります。国際社会からより多く支援が届くよう、ジャーナリストとして現地の証言を集め、写真やビデオを撮影し、世論を喚起するという役割を担っています。

[写真]スーダンの産科病院で。出産に必要なケアが受けられない地域は多い(c)MSF

「国境なき医師団」の医師は、同じ医師でも求められるスキルは特別です。

海外で活動するため、最低限英語が話せる必要があります。現地では機材が十分にそろわないため、限られた設備で診療ができなければなりませんし、日本では滅多にみない銃弾による傷の手当もできなければなりません。母国にない病気も治さないといけません。

彼らは本業を持っているという意味ではボランティアですが、無償で活動してはいるわけではありません。経験によって異なりますが、月14万円以上が支払われます。食費などは共同生活で賄われます。

[写真]南三陸の避難所で診断するMSFの医師 (c)Jun Saito 20 March, 2011

日本では、1992年に日本事務局が発足。東京にある事務局オフィスには約40人のスタッフが働いています。これとは別に、すぐに派遣に応じられる日本人医師ら300人がいます。2012年には、日本からアフガニスタンやシリア、パキスタン、中央アフリカ共和国など27の国と地域に62人がのべ94回派遣され、援助活動をしました。東日本大震災では、機動力を生かして、翌日には医師など6人のチームがヘリコプターで現地入り。その後ものべ41人が被災地で医療援助や診療所の開設活動にあたりました。