日本の景気が底入れしてきたことで失業率が徐々に下がっています。欧米先進国に比べると日本の失業率はもともとかなり低いのですが、それはブラック企業に代表されるような劣悪な労働環境が放置されていることが原因であるという見方もあり、その評価は分かれています。一方、失業保険などの対策が手厚すぎるとかえって失業率を上げてしまうので、多少劣悪な環境でも就職を促進させた方がよいとの意見があるのも事実です。失業対策はどのような水準が望ましいのでしょうか?

[グラフ]日本の完全失業率の推移

 日本の労働行政は基本的に正社員の雇用維持を最優先するという方向性で進められており、その他の部分はあまり重要視されていません。残業時間についても、労働基準法に定めはありますが、実質的に労使間協定によって残業時間の制限をなくしているところがほとんどであり(いわゆる36協定)、長時間残業が当たり前のように行われています。また法定賃金を下回る給料しか払っていない事業者も多く、労働基準局はこれを積極的に摘発してはいません。雇用さえ維持されるのであれば、その他の部分には目をつぶるという方針が失業率を下げているという解釈には一定の説得力がありそうです。

 米国ではこのところ失業率の低下が著しいのですが、それはリーマンショック後に導入された緊急失業保険制度の期限切れが大きく影響しているといわれています。保険をたくさんもらえるうちは労働者はあまり積極的には求職活動をしないのですが、保険がもらえなくことが確実になると悪い条件でも就職するというメカニズムです。やはり、失業対策を限定的にすれば、社員の待遇はともかくとして、失業率自体は下げることは可能であるといえそうです。

 一方欧州は、企業に対する行政指導が厳しく、法定賃金以下の労働や長時間残業は基本的に許容されません。社員の待遇が完全に保障されていることから、企業側はなかなか社員を新規採用したがりません。その結果、若年層を中心に高い失業率が続くという状況が続いています。