2008年以降、天文学的なハイパーインフレに見舞われ、通貨がまさに紙くずになってしまったアフリカのジンバブエで、今年の1月から日本円が法定通貨として採用されることになりました。これはどういうことなのでしょうか?

 ジンバブエは独裁者ともいわれるムガベ大統領が支配する強権的な国として知られています。すさまじいまでの汚職や食糧危機、コレラの蔓延など、最悪の状態が続いています。ジンバブエの中央銀行は政府に求められるがままに紙幣を印刷して財政赤字を埋め合わせたため、ジンバブエは制御不能のハイパーインフレに突入してしまいました。2000年前半と比較すると物価は数年で10の20乗倍近くまで上昇しています。一時は、1日で物価が2倍になるという日もあったそうです。かつて第一次大戦後のドイツでハイパーインフレが起こったことがありました。しかし、ドイツのインフレは5年間で1兆倍(10の12乗倍)ですので、ジンバブエのインフレはこれをはるかに上回っています。

 ハイパーインフレになると、誰もその通貨を使わなくなります。ジンバブエではかなり以前からドル紙幣が流通しており、現実の買い物には米ドル紙幣が必須という状況になっています。政府も自国通貨を使うことを諦め、公務員ですら給料を米ドルで受け取っている状況だったのです。

 ジンバブエの中央銀行は2009年にジンバブエドルを廃止し、米ドル、ユーロ、ポンド、ランド(南アフリカ)などを組み合わせたマルチカレンシー制度の導入を決定しました。とはいっても通貨の絶対量が少ないことから、今回、中国の人民元と日本円などいくつかの通貨を法定通貨に加えることになったわけです。しかしながら、荒れ果てたジンバブエに投資をする企業は少なく、ダイヤモンドなど天然資源を輸出することぐらいしか外貨を稼ぐ手段がありません。しかもこうした鉱山利権は大統領一族など既得権益者が押さえており、市場にスムーズに紙幣が流通するわけではありません。結局、従来のように米ドルしか流通せず、その米ドルも不足気味というのが実情のようです。したがってジンバブエに行って日本円を提示しても、実際には使用できないかもしれません。