■強靭だったメンタル

 SP3位からの逆転勝利に羽生結弦は、「気迫の意地」と落ち着いて話をした。SPでは、4回転トゥリープでまさかの転倒。元全日本2位で後身の指導と共に評論家として活躍中の中庭健介氏は、現地で取材を続けていたが、この日の午前中の練習では、その後遺症が残っていたという。

 「勝つためにはノーミスしかなかったが、朝の練習では4回転トゥループが良くなかったんです。SPでアンダーローテーションと判定されていたこともあって、しきりに回転と着氷を気にする素振りをしていました。SPでは、回転に入るスピードも足りず、カーブを描くように入っていましたが、その修正ができていない感じでした」

 しかし、直前の6分間滑走では見事に修正がされていて、中庭氏は驚いた。
 「おそらくオリンピック後は取材やイベントなどで引っ張りまわされ、まともに練習時間は取れていなかったのでしょう。体にキレもなく、しかも、五輪の金メダリストとして負けられないというプレッシャーがのしかかっていました。そういう負の条件を乗り越えて、ほぼノーミスで逆転優勝したメンタルの強さには感服します。この経験は、次の平昌五輪に間違いなく生きると思います」

 元全日本4位でインストラクターとして活動している今川知子さんは、疲れの出るはずの後半に3回転ルッツから、1回転ループ、3回転サルコウへとつなげた3連続のコンビネーションジャンプに、ソチ五輪から、の成長の跡を覗えると見た。

 「あのスピード、流れでは、2つめのジャンプは、3回転ジャンプを飛んでも失敗するか、2回転にする選手が多いが、羽生選手は失速した踏切でも3回転を飛び、着氷したことに驚きました。普通の選手ではあり得ないことなので」

 これでグランプリファイナル、ソチ五輪、世界選手権の3大会で優勝して3冠を達成した。01―02年シーズンのアレクセイ・ヤグディ(ロシア)以来2人目の快挙だ。

 中庭氏は「4回転も多くなく、採点方法も含めて時代が違うので比べようがないが、スピン、ステップシークエンスなどの技術は間違いなく羽生選手が上回っているでしょう」と見ている。