追加緩和の実施をめぐって注目されていた日銀の金融政策決定会合ですが、今回は大方の予想通り、追加の緩和策が見送りとなりました。これは何を意味しているのでしょうか?

 日銀は昨年4月の金融政策決定会合において、大量の資金を市場に供給する量的緩和策を開始しました。日銀の狙い通り、国内の物価は上昇を始めましたが、今のところ景気回復の足取りは弱く、設備投資もあまり伸びていません。市場では日銀による追加緩和策を期待する声が高まってきており、一部の市場関係者は今回の決定会合で追加緩和策が決定されるのではないかと予想していました。

 今回、追加緩和策が見送りとなった背景には、物価上昇の実情をもう少し見極めたいという日銀の意向があると考えられます。2月の消費者物価指数はコア指数が前年同月比プラス1.3%と、数字の上ではデフレの脱却に成功しました。しかし実際には、円安に伴う輸入物価上昇のインフレである可能性が高く、円安のペースが鈍化すると、それに合わせて物価上昇のペースも鈍ってきています。

 日銀の黒田総裁は、実は1月の金融政策決定会合において、すでに「半年程度は消費者物価指数の上昇率は1%台で推移する」という趣旨の発言を行っています。この見解は、今回の金融政策決定会合でも継承されました。これまでの物価上昇において円安が大きな役割を果たしていることについて、日銀はかなり以前から認識していたと考えてよいでしょう。

 日銀はもうしばらく物価の様子を見て、物価上昇の流れが止まってしまうようであれば、追加の緩和に踏み切る可能性が高いと考えられます。しかし量的緩和策を過度に行えば、かえってインフレを加速させてしまうなど、様々な弊害が出てくることが予想されます。

 追加緩和を行ってしまうと、日銀にはもはや次の手がなくなってしまいますから、あまり無理はしたくないというのがホンネでしょう。もし円安以外にも物価上昇の要因があり、持続的に景気拡大と物価上昇が続くという傾向が見えてくるのであれば、追加緩和を行わないという選択肢も出てくるかもしれません。

 もっとも今月からは消費税が引き上げられており、駆け込み需要の反動で、景気の落ち込みが懸念されています。政府は公共事業の前倒しでこれに対処する方針ですが、景気の落ち込みが激しい場合には、日銀の意向とは関係なく、追加緩和の圧力が高まってくるでしょう。

(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)