東京都が青少年育成条例にもとづき、漫画『妹ぱらだいす!2』(KADOKAWA)を「不健全図書」に指定したことで、「表現の自由」が侵されるのではないかと話題になっています。不健全図書とは、行政側が「性的感情を著しく刺激する」と判断した漫画やアニメを18歳未満が購入できないようにシール止めや成人コーナーへの移動を義務付けるもので、特に作品中の「擬音」や「体液」の多さが問題視されます。しかし、今回の指定で問題になったのは「わいせつ性」だけではありません。東京都の青少年育成条例は2010年に一部改正され、婚姻が禁止されている近親者間の性行為など社会規範に反する表現も不健全図書の指定基準に加わりました。『妹ぱらだいす!2』は主人公が妹5人と同居して性行為に及ぶ作品です。今回はこの“新基準”が適用された初めてのケースで、そのため今後は「妹」を題材にするだけで不健全図書の烙印を押されてしまうのではないか、と心配する声が上がっているのです。

 新基準は本当に「表現の自由」を制限するものなのでしょうか。

憲法の規定と都の不健全図書基準

[図表]憲法が規定する「表現の自由」と東京都の「不健全図書」の指定基準

 憲法21条は表現の自由の保障を規定しています。表現の自由とは、“人の内面の精神作用を外部に発表する自由”のことです。過去には、D・H・ローレンスの『チャタレー夫人の恋人』の日本語訳をめぐって作家・伊藤整と出版社社長がわいせつ物頒布罪に問われた裁判、マルキ・ド・サドの『悪徳の栄え』の日本語訳で作家・澁澤龍彦と出版社社長がわいせつ罪に問われた裁判などをはじめ、「わいせつ性」と「表現の自由」をめぐる議論が何度も行われてきました。国会で実務者協議が行われている児童ポルノ法をめぐっても同様の議論があります。東京都が今回の新基準を制定したときも、やはり表現の自由との兼ね合いが問題になりました。

 そこで、東京都青少年・治安対策本部はこうした漫画規制について、漫画を描くことや出版することは自由であり、あくまでも規制は「青少年への販売・閲覧を行わないこと」だとし、新基準の対象を次のように限定しました。(1)漫画やアニメなど「画像により」(2)「刑罰法規に触れる」または「婚姻を禁止されている近親者間の」(3)「性交、または性交類似行為」を(4)「不当に賛美したり誇張するような描写、または表現したもの」――。新基準の対象はこの4つ全部に該当するものだけで、「表現の自由の侵害するものではない」と主張しているのです。