[画像]ドリブルで突破する内田篤人(写真:ロイター/アフロ)

ギリシャにとっては、さぞかし守りやすかった一戦だったに違いない。前半38分にキャプテンのMFカツラニスが2枚目のイエローカードを受けて退場し、50分以上を一人少ない状態で戦わざるを得ない状況になっても、数的に不利だと感じる時間帯はほとんど皆無だったはずだ。

ボールポゼッションが70%近くに達した日本の攻撃を、自陣深くに形成されたギリシャの強固なブロックが跳ね返す。両チームともに無得点の均衡が崩れない中で、アルベルト・ザッケローニ監督は最後となる3人目の交代のカードをなかなか切らない。

残り時間が5分を切り、出された指示は189cmの長身DF吉田麻也(サウサンプトン)を前線に上げるパワープレーだった。コートジボワールとの初戦でも用いられた作戦はしかし、189cmのマノラス(オリンピアコス)、185cmのパパスタソプーロス(ドルトムント)の両センターバックを中心に、高さと強さを兼ね備えたギリシャの守備陣には通用しなかった。

4分間のアディショナルタイムを含めた残り時間で、吉田をターゲットとして上げられたクロスはわずか3本しかなかった。ひとつは吉田がヘッドで落としながら走り込んできたFW大久保嘉人(川崎フロンターレ)に合わず、残るふたつは競り合いの中で吉田がファウルを取られた。

奇襲がギリシャの脅威とならないまま、試合終了を告げるレフェリーのホイッスルがナタルの雨空に鳴り響く。コートジボワール戦で逆転負けを喫してから5日。文字通りの必勝を誓って臨んだ一戦で突きつけられた、限りなく黒星に近いスコアレスドローが選手たちから笑顔を奪い取った。

元日本代表MFで、現在は解説者を務める水沼貴史氏は「相手を崩す上で違う方法論があったのではないか」と、パワープレーを含めたザックジャパンの攻撃に疑問を投げかけた。「スペースはこちらから仕掛けて作り出せるものであり、その意味で言えばペナルティーエリアの中や相手のゴール近くで、ギリシャに脅威を与えるプレーをした選手がいなかった。クロスは入るけれども、相手がもっとも怖がる場所、ここでシュートを打たれたら嫌だという場所に日本の選手が誰もいないシーンが何度あったことか。ブロックの中へ入り込んでいくには走ってパスを受けるか、あるいはドリブルを仕掛けるしかない。走って受けるプレーは内田篤人が何度も実践していたので、ならばドリブルで入っていける選手を3人目の交代選手として使うべきだったのではと個人的には思っている」。

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