ラリー・ペイジ氏(写真:ロイター/アフロ 2012年5月21日撮影)

 「人間は忙しく働く必要がなくなりつつある」というグーグル創業者ラリー・ペイジ氏の発言が話題となっています。働かなくてよいとはどういうことなのでしょうか?

 この発言は、米国の著名ベンチャーキャピタル(ベンチャー企業を育成するために資金を提供する専門の投資会社)が主宰したフォーラムにおいて出てきました。司会者のベンチャーキャピタリストの「今後、15年から20年の間に、かつて農業人口が激減した時と同じようなことが起こるのでは?」という話題の提起に対してペイジ氏は、「私たちが幸せに生活するための資源はそれほど多くない。今の1%程度あれば十分であり、不必要な活動が、過剰な忙しさや環境破壊の原因になっている」と指摘しました。

 つまり、グーグルに代表されるようなテクノロジーをフル活用すれば、たいがいの仕事は機械に置き換えることが可能であり、人間はムダなことに時間を使わずに済むというわけです。

 確かに現在の工業化社会は、それを維持するためにさらに資源を浪費するという側面があり、実際に人間が生きていく上で必要となるレベルをはるかに超える資源をムダ使いしているという指摘は一理あります。これからは人工知能やロボットといった新しいテクノロジーが劇的に進化してきますから、従来8時間かけて行っていた仕事を2~3時間程度でこなせるようになるかもしれません。その余った時間を有効活用することができれば、人間は心身ともに豊かに暮らせるようになる可能性があります。

 しかし、同じくグーグルのもう一人の創業者であるセルゲイ・ブリン氏が指摘するように、人間には限りない欲というものがあります。時間に余裕ができても、人々はそれ以上の娯楽を求めるようになるので、労働力に対するニーズは変わらないと発言しています。

 かつて農業が産業の中心だった時代には、食料品を生産することだけに、人間の労働力のほとんどが費やされていました。工業化によって、食料の生産に必要となるコストが激減し、人間にはたくさんの余暇が生まれました。しかし、消費欲があらたな産業を生み出し、解放された時間をゆっくり堪能するような状況にはなっていません。人間の欲にはキリがないというブリン氏の指摘の方が正しいのかもしれません。

 いずれにせよ、今後20年の技術の進歩は、これまでの想像をはるかに超える急激なものであるということは、ほぼ間違いなさそうです。英オックスフォード大学では、ロボット化や人工知能の活用によって従来の仕事の約半分が消滅すると予想しています。人間がその分、ゆったりと生活をすることができるのかは不明ですが、少なくとも、私たちの仕事に対する概念は大きく変貌しそうです。

(大和田 崇/The Capital Tribune Japan編集長)

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