日本は何らかの対応が必要なの?

 これに対し「内政干渉だ」とする声もあるようです。しかし外形的にも実質的にもそこまではいかないでしょう。そもそも日本は条約を批准していて、今回の勧告も締約国が6年に1回審査を受ける、いわば定期審査の結果に過ぎません。約束だから審査は仕方ないのです。さらにいえば法的拘束力もなく単に国連傘下の委員会から見解を示されたというだけ、といえば「だけ」です。したがって勧告をどうとらえるかは日本の自由。慰安婦問題は基本的に日韓の2国間問題のはずなのですから。

 勧告に対する日本の態度としては、必要と思えば改めるし、でなければ無視していいでしょう。

 今回の勧告は慰安婦ばかりに焦点が当たっていますが、委員会は同時にヘイトスピーチ(憎悪表現)の禁止や特定秘密保護法運用の厳格化、死刑制度の廃止を促すなど多様な要求のうちの1つです。ヘイトスピーチに関して日本は表現の自由の観点から人種差別撤廃条約の一部を差し控えて批准しています。死刑制度は厳然と存在します。こうしたところが元々委員会から疎まれる要素になっている可能性はあるのです。

 もし改めるとしたら個人通報制度の容認でしょう。日本の司法制度に問題がないとはいえないものの、極端な人権侵害をしているようには思えません。どうしてもここを動かしたくないのは恐らく最高裁判所の意地。譲れるところは譲っておけば委員会の心証も少しはよくなるかもしれません。

 いや、そうする必要すらないという意見もごもっとも。B規約を批准し、定期審査も受けているのは人権尊重国の仲間入りをしたからで、結果あれこれいわれるのも仕方ない。カッとして脱退など愚の骨頂で、それではB規約を批准していない中国(だから審査もされない)などと同じになってしまいます。

なぜこのような勧告が出てきた?

 今回「性奴隷」とまで勧告で強調された背景には旧人権委員会や自由権規約委員会で従軍慰安婦問題を取り上げるよう90年代から熱心に働きかけた内外のロビー活動の「成果」です。そちら側の情熱に対して日本の立場を認めるよう働きかける側の対応が不十分だったのは確かで、結局表現が行き着くところまで行ってしまった感があります。

 元来、自由権規約委員会は性質上あらゆる人権侵害をそうだと認定するのが役割であり、それをもって国連や国際社会の総意になるわけでもありません。日本には根強い国連信奉があります。だからこうした勧告が出るとビックリするのかもしれません。実態としての国連は「世界連邦」のようなイメージとほど遠く、腐敗が指摘され無用論まであります。実質的に機能しているのは安全保障理事会だけで、それも常任理事国が1か国でもノーと言えば何も決まらない仕組みです。総会の決議すら法的拘束力はありません。ユネスコなど世界遺産で“一発当てる”まで何をしているのかわからない国連機関でした。

 国連は不十分な国際組織です。と同時にこれ以上の国際組織がないのも事実。過大な国連信奉を改めるか、でなければ日常の働きかけを強めるか、どちらかを選択するのが実効的な方法のはずです。


■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】

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