[画像]NDロードスターの透視図。スポーツカーの王道を行くコンポーネント配置。エンジン本体は前輪より後方にきっちり収まり、リアタイヤの位置はドライバーの直後にある

 9月4日に発表されたマツダの新型ロードスターに、発売前にも関わらず注目が集まっている。初代の発売から25年が経過し、今や世界で最も愛されるスポーツカーの地位を不動のものにしたロードスター。それだけの成功をすれば、ライバル各社が刺客を開発中との噂もそれなりに信憑性があろうというものだ。

 なぜ今さら刺客のタイミングなのかと思う向きもあるだろうが、国内メーカー各社はここのところスポーツモデルの開発に熱心なのだ。ホンダは3モーターのスーパー4WD機構をもつハイブリッドNSXや、軽ミッドシップのS660を開発中だし、トヨタはBMWエンジン搭載の次期スープラを模索中だ。

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王者ロードスターへの挑戦者

 各社がスポーツモデルを諦めていた空白の10年、事実上そのマーケットを独占し、成功モデルとして君臨していたロードスターがターゲットになるのは当然と言えば当然のことである。そして思い返してみれば、かつて初代ロードスターへの刺客を差し向けた内外の全社が返り打ちにあった歴史もある。他メーカーにとっては雪辱戦でもあるわけだ。

 NSXとスープラの話は両社の公式発表に基づいているが、以下のモデルについてはあくまでも業界の噂話の域を出ないことは予め明言しておく。キーになる噂は二つある。一つはトヨタは86の下に位置する小型FRスポーツを開発中という噂。もう一つはホンダが前回の東京モーターショーで注目されたS660に排気量拡大版を用意するという噂だ。噂の真偽はわからないが、仮に本当だったとして、果たしてこれらがロードスター超えをする可能性はあるのだろうか?

車両重量1000キログラムの戦い

 NDロードスターは、ボディの小型化に加え、地道な軽量化を行って車両重量を約1000キロのラインまで絞ってきた。車両重量はスポーツカーにとって極めて重要な要素で、やはり1000キロを切ると、格段に身ごなしが変わる。理想は常にここにある。

 しかし、ここ数年、もはや1000キロのラインに挑むことは事実上不可能だと言われてきた。衝突安全基準をクリアする限り、どう頑張っても1100キロがせいぜいだったのだ。実際ロードスターも現行モデルでは1120キロと、例外ではない。無頓着に作った結果が1120キロだったわけではなく、爪に火を灯すような軽量化の末がそういう結果だったのだ。

 新型が実現した1000キロという数値は、現代の衝突安全基準をクリアして現実的な快適装備をもつクルマとしては驚嘆に値するレベルなのだ。そして現時点ではNDロードスターがこれだけの軽量化ができた理由はボディの小型化以外は正式には発表されていない。

 例えばBMWのZ4の車両重量は1500キロ。500万円のクルマを買う顧客をもてなす装備を載めば、そういう重量になるのは仕方ない。Z4が重いのではなく、むしろ普通なのだ。クルマの方向性としてはライバルだが、価格と重量面で話にならない。

 ロータス・エリーゼは高コストを承知でメインフレームにアルミを、外皮にFRPを採用した。しかも史上例を見ない接着剤による組み立て方式で軽量化を徹底し「装備は何にも要らないからとにかくスパルタンに」という特殊なマニア顧客に応えてようやく900キロだ。現代のクルマの標準的な吸音材を装備をするだけでも数十キロを要するだろう。

 ダイハツ・コペンは実用装備を諦めずに850キロの軽量を成し遂げてみせたことは立派だ。ただし軽自動車枠の64馬力制限に合わせた骨格だからという部分はあるだろう。余裕を真面目に削ったからこその軽量高剛性ボディであって、限られた動力性能を前提にして成立している。だから馬力が倍になっても成立するかと言えばそれは難しい。ある意味レギュレーションの中で創意工夫するという知的で大人のアプローチではあるが、自由に排気量を設定していいと言われたら開発陣が660ccを選択したかと言われればおそらくそうではあるまい。

 ほとんど自動車の枠をはみ出しかけているスーパーセブンの660ccモデルは490キロと非常識なほど軽い。だがどこがどうというレベルでは無く、もう色んな意味で普通ではない。そもそも市販レーシングカーとして開発されたクルマだから本質的には乗用車ではなく、たまたま乗用車に転用されているだけなのだ。日常のアシとして使う人も世の中にはいるかもしれないが、それは例外に過ぎない。ロードスターとは違うクルマだ。

 結局のところ、スポーツカーは日常のアシとしての機能と、スポーツのバランスをどこで取るかによって性格が決まる。例えば、Z4はかなり日常性に寄せたクルマだし、エリーゼは逆に半分レーシングカーみたいなもので日常的に使うのは厳しい。スーパーセブンは前述のように、比喩では無く昔のレーシングカーそのもので日常性が皆無だ。一台で普段のアシとして使いながら楽しめるスポーツカーは、結局ロードスターとコペンしかない。