辰吉の父と息子のツーショット

元WBC世界バンタム級王者、辰吉丈一郎(44歳)の次男、辰吉寿以輝(18歳、大阪帝拳)が24日、大阪の松下IMPホールで行われたプロテストに合格した。プロテストは筆記と、2ラウンド2分30秒で行われた実戦のスパーだったが、左フックで異例のダウンを奪うなど、随所に“カリスマ遺伝子”のセンスを垣間見せた。目標は「世界チャンピオン」。来春にも、大阪でプロデビュー戦が組まれる予定だ。

 2分30秒×2ラウンドで行われたプロテスト。
 のっけからアクシデントがあった。プロテスト主催の関西コミッションがグローブの用意を忘れ、大阪帝拳ジムが近くのジムへ取りに行くという事態がおきて、予定時間が30分遅れた。それでも寿以輝は、「別に関係なかった。そのあたりをウロウロしていた」と、そしらぬ顔で、無観客のリングに上がった。

 ヘッドギアとファウルカップを装着したが、そのリングシューズには、父が愛したミズノのライン。そして、まずファイティングポーズが父親譲りだった。やや左のグローブを下げた戦闘的スタイル。身長では、父より2、3センチ大きく、この日、リングに上がったウエイトは、59.4キロだったが、逆三角形の背中は、よく似ている。将来的にタイトルを狙っていく階級は、スーパーバンタムか、カリスマと呼ばれた父が、こだわり続けたバンタム級だ。筆者は、その立ち姿を見て少々、ノスタルジックな気分になった。

 左のダブルのジャブからプレッシャーをかけていく。「めちゃ緊張して硬くなった」と本人が反省するように手数が出なかったが、ワンツー、ワンツーから右ボディも絡めてのコンビネーションブローで距離をつめて左フックをブンと振り回すと、相手を務めた小山英哉(25歳、ワイルドビート)は、ガクンとバランスを崩してコーナーへ吹っ飛んだ。安全性を優先するプロテストという場であってレフェリーはダウンをとった。ヘッドギアを装着して12オンスのグローブで行うプロテストでのダウンは、受験者同士の対戦ならばたまにあるが、一方がすでにプロの場合は極めて珍しい。

 2ラウンドに入ると、右の長いクロスをうまく重ね、左のカウンターを狙う。スリー、フォーまでのコンビネーションブローもインサイドから。上半身で巧みにスウェーをしてパンチを外しておいて放つ一撃には、父を彷彿させるセンスが光った。
2ラウンドを採点するとすれば、寿以輝の圧勝である。
太い二の腕と、ジムで一番のパンチ力。父はスピードと超攻撃的センスを持ったボクサーだったが、息子はスピードではなくパワーボクサー。ダウンを奪った返しの左フックは、父が得意としていたパンチではない。後から聞くと、寿以輝は「倒そうと顎を狙っていた」という。闘争心という遺伝子だけはしっかりと継承されている。

 アマチュアで4戦4勝、この4月にプロデビューして1戦1敗の小山も、辰吉Jrの持つ非凡さに脱帽した。
「ワンツーは速いし左フックの返しと右ストレートが強い。プレッシャーが凄かったし、パワーを感じた。パンチ力と体の強さですね。もし、これが試合なら、あのパンチでかなり効かされていたと思う」

 数十分後に、待望の合格通知がドアの前に張り出された。
「(プロ合格は)気持ち的に嬉しいけど、ボディが得意なのでもっと打ちたかった。自己採点は? 低い。点数は下の方で」
 言葉少なく喜びを表現した寿以輝は、追いかけているテレビ局の企画もあって、携帯で父親へさっそく合格を報告した。

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