衝撃的だったゴールキーパーのゴールから一夜が明けた。来季J1昇格の最後の1枠を懸けた「2014 J1昇格プレーオフ」の準決勝が11月30日に行われ、モンテディオ山形が2-1でジュビロ磐田を下し、ジェフ千葉と戦うプレーオフ決勝(12月7日、味の素スタジアム)に進出した。
 1-1で迎えた後半アディショナルタイムに右CKからヘディングシュートを決めたのはGK山岸範宏。Jリーグ史上初のGKによるヘディングシュートを決めた“奇跡のGK”とはどんな男なのか。

「初めて山形に来て、このチームはトレーニングのとき、ピッチ上でお互いに要求し合うことがあまり得意ではないのかなと感じました」
 14年間在籍した浦和レッズから今年6月に山形へ移籍。36歳のGKは、移籍当初をこのように振り返った。
 山岸は埼玉県熊谷市の進学校である熊谷高校から中京大を経て01年に浦和に加入。同い年の都築龍太と張り合いながら浦和のゴールを守り、06年にJリーグ優勝を果たしたときは正GKを務めていた。
 性格は根っからのリーダータイプで親分肌。浦和では移籍加入してきた選手が真っ先に挨拶に行くという存在だった。面倒見の良いことでも知られ、やんちゃな原口元気(現ヘルタ・ベルリン)に辛抱強く“生活指導”をしていたことも。加えて、体作りに熱心で、浦和時代には練習後に後輩を引き連れて居残りで体幹トレーニングをする姿がよく見られた。

 浦和で出場機会が減り始めたのは12年だった。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の就任に伴い、GKにもビルドアップに参加することが求められるようになり、ガッチリ守るタイプの山岸は出番を失った。
 昨季終盤にはレギュラーを奪い返したものの、今季はサンフレッチェ広島から日本代表GK西川周作が移籍加入したことにより、さらに出番は減少。ワールドカップによるJ1中断期間中の6月、出場機会を求めて山形に移籍した。

 山形では、「自分には浦和で培った経験がある。その経験を山形に伝えて、たくましく勝てるチームにしたいと思いました。具体的には、もっと意見をぶつけ合っていいんだと言いました」と話すように、まずはメンタル面から改革を促すことで、悪い流れを変えようと努力した。
 移籍後の最初試合である6月21日のカマタマーレ讃岐戦で3-0の完封勝利を収めて幸先の良いスタート。しかし、その後の5試合は1勝4敗と苦しむ。

 けれどもここで、へこたれることがなかったのが山岸だった。負けてもすぐに前を向く姿を見た石崎信弘監督は、英断に出た。7月30日の第24節千葉戦から山岸をキャプテンに指名したのだ。
 この決断が奏功した。千葉戦は0-2で敗れたが、山岸はアウェイのフクアリに足を運んでくれた熱心なサポーターの近くまで行き、言葉をかわした。
「平日にこれだけ多くのサポーターが駆けつけてくれたのはありがたい。選手もサボっているわけではない。サポーターには『ホームで勝って一緒に喜ぼう。前を向いて我慢してほしい』と言った」
 山岸の行動でピッチとスタンドの距離を縮めることに成功。すると、次の大分トリニータ戦で2-1の勝利。その後成績は徐々に上向き、山岸が加入する前の山形は6勝7分5敗で12位に低迷していたが、加入後は12勝3分9敗で最終的に6位まで上がるという結果となった。

 山岸の加入後はJ2リーグだけではなく、天皇杯でもあれよあれよの快進撃を見せている。磐田とのプレーオフの4日前の11月26日にはジェフ千葉との準決勝を3-2で制し、12月14日に行われるガンバ大阪との決勝戦にも駒を進めている。
 

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