天皇杯準決勝での今野 2014年11月26日撮影(写真:長田洋平/アフロスポーツ )

 試合後の挨拶を終えて引き揚げてくる途中で、ガンバ大阪のMF今野泰幸はピッチの上にひざまずいてしまった。センターサークル付近で両手を合わせながら、祈るような気持ちでベンチを見つめる。

 6日に行われたJ1最終節。敵地ポカリスエットスタジアムで徳島ヴォルティスを下せば、得失点差の関係でほぼ100%の確率でガンバの優勝が決まった。しかし、最下位のチームが形成する強固なブロックを崩せないまま時間だけが経過していく。
 スコアレスドローを告げる主審のホイッスルが鳴り響いた瞬間、今野の脳裏にはネガティブな思いが駆け巡っていた。
「やっちゃったという感じでしたね。最後のほうでヤットさん(遠藤)がパスを回し始めたので『オレらに有利なのかな』と感じたけど、前節で浦和が最後にあんなことがあったし、サッカーは最後までわからないし、他会場は全部勝つとオレは思っていたので」

 キックオフ前の時点でガンバと勝ち点62で並んでいた浦和レッズは名古屋グランパスに逆転負けを喫し、優勝の可能性を残していた鹿島アントラーズもサガン鳥栖に苦杯をなめていた。
 4分が提示された後半のアディショナルタイムが残り1分を切ったところで、長谷川健太監督が近くにいたDF丹羽大輝にレッズとアントラーズの状況を伝え、キャプテンのMF遠藤保仁が最終ラインに下がってリスクを冒すことなくボールを回し始めた。

 激しい守備からのカウンターを徹底してきたヴォルティスも、前へ出てくる機会を逸した。長谷川監督をして「奇妙な感じ」と苦笑いさせた光景の中で試合が終わり、ひと呼吸置いてガンバのリザーブの選手たちが狂喜乱舞しながらピッチへなだれ込んできた。
 ガンバにとって2005年以来、9シーズンぶり2度目となるリーグ優勝。FC東京から移籍して3シーズン目となる今野は、14年目のプロサッカー人生で初めて手にしたリーグ戦のタイトルに、しばらくは夢心地の中にいた。
「ガンバらしくはない試合だったし、正直、奇跡みたいな話。相手がこけてくれて拾ったような感じだし、実感はない。今日も最高の準備をして試合に入れたし、メンタル的にも落ち着いていた。体の調子もよかったけど、いざゲームになってみたら鉛のように体が重かった。これまで優勝争いすらもしたことがなかったので、これがプレッシャーなのかと何度も感じた。自分にとっても大きな経験になった」

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