#01 「良き来世のために」

ヒマラヤ山脈に位置する小さな王国、ブータン。チベット仏教を国教とするこの国では、老若男女を問わず、市民の日常生活に仏教が溶け込んでいる。家には必ずといっていいほど仏壇が置かれ、街かどにある小さな祠にも、通りすがる人々が手を合わせていく。首都ティンプーでもっとも賑わう仏塔がメモリアルチョルテンだ。第3代国王の発願により建てられたこの塔には毎日多くの人々が訪れるが、ここで1日中過ごす老人たちの姿も珍しくはない。経の書かれたマニ車のそばで、祈っていたひとりの老人がこう言った。
「わたしもそろそろ死ぬ。いい来世になるかはわからないが、いまは祈るしかない」
ブータンの仏教の根底にあるのは「輪廻転生」。肉体が滅んでも、魂はまた生まれ変わる。だからいい来世になるように、現世で善行を積んで、祈り続ける。
(2014年8月)

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