[写真]安倍首相。第二次政権の安倍首相は第一次政権時と比べて明らかにケンカ上手になった、という。(ロイター/アフロ)

 第二次政権の安倍首相は第一次政権時と比べて明らかにケンカ上手になった。首相あるいはその周辺が過去の政治からよく学んでいることがうかがえる。

 今日の日本政治の基底をなすのは1994年の政治改革である。政治改革は、非自民非共産の8党会派からなる細川連立政権のもとで、(1)衆議院の選挙制度を中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変更する選挙制度改革、(2)政治家個人への企業・団体献金の制限と献金の透明化を図る政治資金改革、そして(3)税によって賄われる政党交付金制度の整備、を内容としている。政治改革により、政治家個人ではなく政党中心の政治、利益誘導ではなく政策中心の政治の実現が目指された。

 政治改革後の政治にはいくつかの特徴がみられる。その例を挙げるとすれば、第1には政権が有権者からの付託を受けるうえで衆院選の重要性が大きく高まったこと、第2には党首が政治の前面に登場するようになったこと、第3には政治のテーマ設定が重要になったこと、第4にメディアを味方につけ離反させないことが重要になったこと、第5に世論の支持が高ければ党内は抑え込める可能性が特に自民党では高まったこと、などということになろう。安倍・自民党もまたこうした変化に対応してきた。2014年の解散・総選挙は、こうした学習を経た安倍政治の特徴を如実に物語っている。

 今回、安倍・自民党は、「アベノミクス」以外を争点にしないように最大限の努力を払っている。首相は街頭演説では大きな議論を呼び続けている集団的自衛権や特定秘密保護法には触れず、自民党の選挙公約にも言及はなかった。特に集団的自衛権関連の安全保障法制の整備は2015年に行われることになっており、政権を担う自公両党の主張に齟齬があるなか、有権者はその真の意味合いについて知らなければ本来的には候補者や政党を選択することはできない。憲法改正についても、自民党が具体的に訴えることはなかった。原発政策を長年主導してきた自民党政権が福島第一原発の事故を総括し、反省し、未来を展望することもなかった。中国との緊張関係をどうするのか、あるいは日本の国際的な評価に大きく響いている靖国問題をどうするのかについても説明はなかった。徹底して「アベノミクス」という経済政策をテーマに絞る戦術をとったのが安倍・自民党である。

 ただ、その際も、「アベノミクス」が具体的に何を意味するのか、語られることはなかった。「第一の矢」である異常な金融緩和とこれに伴う円安誘導、それに「第二の矢」である伝統的な公共事業が結局はアベノミクスの実態なのではないのか。さらに「第三の矢」が農政改革であり、カジノ解禁であり、雇用の流動化の加速であり、原発の輸出や再稼働であれば、影響は大きい。世論の方向性が定まっていないにもかかわらず、ここでも安倍・自民党からの説明は乏しかった。今日の日本において深刻な課題となっている社会保障や貧困問題についても、消費増税の延期を理由とした解散であったにもかかわらず、今後の構想が語られることはほとんどなかった。

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