いよいよ高校サッカーは、明日、1月10日から埼玉スタジアムを舞台に準決勝の戦いに入る。「蹴都移転」と銘打たれた今大会は、決勝の舞台が改修工事中の国立競技場から離れることになった。埼玉スタジアム移転はこのためだが、実は以前にも準決勝に関しては「埼スタ開催」だった年がある。6年前の第87回大会だ。鹿児島城西の大迫勇也(現・ケルン)が“ハンパない”活躍を見せた大会と言えば、ピンとくる方も多いかもしれない。

 同大会で鹿児島城西と「埼スタの準決勝」で激突して散っていったチームが、前橋育英(群馬)だった。そして、群馬の強豪校がベスト4で敗れるのは何もこれが初めてではない。第77回大会(1998年度)、第78回大会(1999年度)、第80回大会(2001年度)、そして第87回大会(2008年度)と4度目のこと。しかし、過去一度も「4強の壁」を破れていない。今大会が、5度目の挑戦だ。

「俺は呪われているのかな」

 山田耕介監督はそんな言葉で、この壁の厚さを表現していた。山口素弘氏、故・松田直樹氏、細貝萌(現・ヘルタベルリン)ら錚々たる選手たちをコンスタントに育ててきた名伯楽は、一方で「勝負弱い」というレッテルを貼られることが少なくない。16年間で5度目の4強進出という数字は、群雄割拠の時代に突入した高校サッカーにあって驚異的とも言えるモノなのだが、注目度が飛躍的に高まる準決勝だけに、「負けた」という印象のほうが鮮烈に残ってしまうものなのかもしれない。

 昨年は各ポジションに身体能力に優れた選手がそろい、全国でも1、2を争うタレント性を誇った。Jリーグのユースチームも参加するプリンスリーグ関東を制覇するなど歴代でもトップクラスでは思えるチームだった。だが、選手権での結果は群馬県予選敗退。山田監督にしてみると、このメンバーでも勝てないのかという思いがあったのかもしれない。今年は選手に対してより強いアプローチを試みているように見える。

 新チームに切り替わってから、山田監督は新3年生について「去年に比べて力がない」とバッサリと評していた。確かにMF鈴木徳真、渡邊凌磨という年代別日本代表に選ばれている目玉選手こそいるものの、身体的に恵まれている選手は少なく、個人能力のアベレージで去年のチームを下回る印象はあった。ただ、記者に向けてそう話す姿勢からは、報道を通じて選手にその言葉を伝えようとする意図も感じ取ることができた。

 高校サッカーのシーズン終わりを告げる大会である高校選手権で、その意図と成果が見えてきた。前橋育英の選手の口からよく漏れてくる言葉は、「見返す」という一言。誰を見返すのかと言えば、山田監督その人である。ボロクソに言ってきた監督に対し、沸き上がってきたのはなにくそという反骨心。渡邊は「見返してやりたい」と語りつつ、「監督を胴上げしたい」とも語る。反発と敬意。反骨と感謝。相反するようにも思える言葉からは、不思議と矛盾を感じない。
 

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