[写真] 成田空港の第2ターミナル。「成田縛り」という行政指導が業界にある(写真:アフロ )

 英ヴァージン・アトランティック航空最後の便が1日、成田空港を出発しました。1989年の就航以来、25年にわたって東京とロンドンを結んできた同社が、とうとう日本から撤退してしまったのですが、奇しくも翌日、カタール航空がやはり日本路線からの撤退を検討しているとの報道がありました。

 日本から外国の航空会社が撤退していくのは、基本的には需要がなくなっているからなのですが、理由はそれだけではありません。背景には「成田縛り」という行政指導の影響が大きいとの声があります。

 成田縛りとは、国土交通省が成田空港に発着枠を持つ航空会社に対して、羽田空港に国際線を新しく就航させる場合には、成田発着便を残すよう求めている行政指導のことを指します。これは法的根拠のないものですからあくまで水面下で行われるのですが、航空会社にとっては、実質的に政府からの命令と解釈されています。

 なぜそのようなことをするのかというと、航空会社に対して自由に路線の申請を許してしまうと、便利な羽田空港に路線が集中してしまい、成田空港を存続させることができなくなってしまうからです。成田空港を運営する成田国際空港株式会社は政府が株式を所有する国有企業で、多くの公務員が天下っています。また、空港の整備業務や空港ビル内に入居する店舗など、経済的な波及効果も少なくありません。このため、成田空港が存続できなくなると、様々なところに影響が出てくるわけです。

 しかし航空会社にしてみると、採算性の悪い成田便を残したまま羽田便を新設しても、日本路線全体としての利益は薄くなります。その結果、一部の航空会社は、日本路線そのものから撤退した方が得策と判断したものと考えられます。ヴァージン航空は、デルタ航空との共同路線拡大を理由としており、「成田縛り」が原因だとは説明していませんが、これが大きな要因になっていることはほぼ間違いありません。カタール航空も撤退理由は不明ですが、日本の航空行政が影響を与えている可能性は高いでしょう。

 このような航空行政は結果として、日本の航空会社に有利に働きます。海外の航空会社との競争が緩和されるからです。日本の航空料金は世界的に見ると突出して高く、国民の負担は極めて大きくなっています。こうした形で日本の航空会社が守られることが、果たして国民の利益になるのかは微妙なところでしょう。

 日本にいるとあまり実感しませんが、ここ20年の間に世界の航空輸送の市場は驚異的なペースで拡大しています。飛行機の旅客数は、北米が約2倍、欧州が約3倍、アジアは約4倍に増加しました。これに対して日本の旅客数は、同じ期間で横ばいという状況であり、相対的に見れば、日本の航空輸送の規模は3分の1の水準に低下してしまったことになります。日本の空のガラパゴス化はさらに顕著になっているようです。

(The Capital Tribune Japan)