#01 「長すぎた年月」

インド北部、パキスタンとの国境で分断されたカシミール地方では長年、独立・自治を求めてインド政府を相手にした武力闘争が続いてきた。いまだ終わることのないその闘争が、もっとも激しかったのが90年代。インド政府軍によって、多くの若者たちが逮捕・拘束され、拷問さえもうけた。インド兵に連行されたまま消息不明になった者の数は推定8千から1万人。インド政府はこの件について口をつぐんだままだ。
そんな、行方のわからなくなった息子を持つ母親たちを訪れた。彼女たちにとって、愛する息子たちの記憶は、写真のなかの姿とともに止まったままだ。
「いつか帰ってくることを祈ってます…。」
淡々とした調子で、母親の一人パルビンはそう言ったが、その声にはあまり力が感じられなかった。インド兵に捕まったとき、息子のジャビッドは16歳。それからすでに20年以上が経ってしまった。希望を持ち続けるには、それはあまりに長すぎた月日なのかもしれない。
(2009年12月)

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