思い描いてきたイメージと現実の世界が鮮やかに一致した。
 ガンバ大阪、浦和レッズともに無得点で迎えた後半23分。ガンバがコーナーキックを獲得した直後だった。ファーサイドにポジションを取っていたガンバのFW宇佐美貴史は、自分をマークするDF森脇良太と駆け引きを演じながら心の中でこう呟いていた。
「ゴールチャンスが訪れるかもしれない」

 28日、日産スタジアムで行われた前年のリーグ戦王者と天皇杯覇者が激突する恒例の富士ゼロックススーパーカップ。昨年はガンバが国内三冠を独占したことで、リーグ戦で最後まで優勝を争った宿敵レッズが対峙した。
シーズンの訪れを告げるキックオフを直前に控えたミーティング。このオフにガンバに入閣した和田一郎コーチから、レッズの選手個々のプレーの癖が詳しく説明された。森脇に関しては、ゴール前で自分がマークする以外の選手がプレーに関わったときに「ボールウォッチャーになりやすい」だった。

 いざキックオフを迎えると、セットプレーにおける宇佐美のマーク役は森脇が担当した。和田コーチの指示をあらためてインプットしながら、宇佐美の脳裏にはレッズが韓国Kリーグの強豪・水原三星に逆転負けを喫した25日のACLグループリーグの失点シーンが蘇ってきた。

「水原戦でもそういう形から点を取られていた。森脇さんが必ずボールウォッチャーになる場面が来るはずだ」

 前半のガンバはコーナーキックを得られなかった。巧みにボールを回すレッズ。狙いを定めてボールを奪い、ショートカウンターを仕掛けんとするガンバ。膠着した展開が続くなかで、宇佐美自身もシュートを1本も放てなかった。それでも緊張感を途切れさせることなく、チャンスを待ち続けた。

 そして、冒頭で記した後半23分。右からキャプテンのMF遠藤保仁が放ったコーナーキックに、途中出場していたFWパトリックがジャンプ一番、ニアサイドでヘディングを見舞う。宇佐美は森脇の一挙手一投足を逃さず観察していた。案の定、ボールウォッチャーになっていた。

「その瞬間を逃さずに森脇さんの裏に逃げようと。あの場面では本当にボールがくる雰囲気があった」

 パトリックのヘディング弾はゴールの枠こそとらえられなかったが、宇佐美が走り込んでいく軌道とゴール前の一点でヒットした。パトリックの動きに目を奪われていた分だけ、森脇の必死の追走も届かない。泥臭いスライディングボレーがネットを揺らした瞬間に、勝負は事実上決した。