3月5日 カージナルスとのオープン戦でモリーナ捕手と談笑するイチロー(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

 メジャー3球団目となった新天地、マーリンズのキャンプで汗を流すイチロー外野手(41)は、リラックスして円滑にチームに溶け込み、順調に開幕準備を進めている。

 チームは才能豊かな若い外野手陣を揃え、その立場は昨年同様レギュラーではない“第4の控え外野手”。しかし、レギュラーを奪ってみせるという自信と意気込みが41歳を溌剌とさせているのは間違いない。イチローのキャンプが順調に進んでいる、その裏にあるのが、マ軍の暖かくもリスペクトに満ちた受け入れ態勢だ。

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 1月に東京で行われた入団会見に出席するため、ジェニングGM始め、球団首脳が滞在24時間以内という強行日程で日本に馳せ参じた際には、イチローも「考えられない」と感激した。その“精神”はキャンプでも浸透している。イチローより2歳だけ年上のレドモンド監督は、「全ての選手が自分を必要とされていると感じることは、とても大切なことだ。レギュラーも控えでも関係ない。我々は環境と整え、選手にサクセスなシーズンを送ってもらいたいと願っている」と語った。

 まず、ロッカーの位置。入って左奥。首脳陣のロッカーに続くVIPな一角を与えられた。左側はターナー通訳。右側は通路で誰もいないため、ルーティンのストレッチやグラブの手入れを行う空間がある。
 打撃練習の際のグループ分けでは、23歳と若い正左翼手のイェリッチが二番手グループに追いやられ、北米プロスポーツ史上最高額となる総額3億2500万ドルの契約を結んだ右翼手スタントン、中堅のレギュラー・オズナと共に主力組に組み入れられている。

 2月28日(日本時間3月1日)のシート打撃では「1番」を打ち、「いきなり1番で打てと軽〜く言われるから。いい、この感じ。いいぞ、いいぞとね」。昨年は2度しかなかった「1番」を楽しんだ。

 主力級が先発した3日(日本時間4日)のマイアミ大との練習試合では、「6番・右翼」で先発。5日(同6日)のカージナルスとのオープン戦開幕戦は「7番・DH」。オズナに休みを与えた7日(同8日)は「6番・中堅」。「イチローが万全で開幕を迎えるために必要な打席数を与えたい。全ての守備位置とDHで起用する」と同監督。投手陣が打順に入るキャンプ中旬までは、DHを利用してイチローの打席を増やす。一方で、6日の220キロ離れた敵地でのレッドソックス戦のバス遠征メンバーからは外れるなどの配慮もある。

 マ軍のイチローへのリスペクトが印象づけられる程に、チーム最高打率の.284を打ちながら、規定打席に達しなかったヤンキースの扱いは対照的にみえてくる。プロの流儀を貫くイチローの口から、古巣に対する恨み言が出ることは恐らくないだろう。だが、昨年9月のシーズン最終戦後の「きょうから162試合やれと言われても僕はできる」というコメントには、欲求不満に終わった無念さがにじんでいた。

 新天地でイチローは、一度として“免除”を願い出ることもなく、インターバルトレーニングや走り込みも若手と同じメニューをこなしている。それがイチローの流儀。メジャー通算3000本の大記録に挑む41歳の開幕準備をリスペクトが感じられる好環境がサポートしているように見える。