#01 「南アフリカとの出会い」

まだ22、3歳の頃だったか、報道写真家になりたいと思い始めた頃、故・伊東正孝記者による南アフリカの露骨なアパルトヘイト(人種隔離政策)を描いたルポタージュを読んで、並々ならぬ衝撃を受けた。以来いつかこの国を自分の目で見たいと思い続けていた僕にその機会が訪れたのは、写真学校を卒業し、まだカメラマンとしてスタートを切った駆け出しの頃だった。長年獄中にあったネルソン・マンデラが釈放され、アパルトヘイト撤廃から新たな時代へと、大きな変化の波がまさに国を揺らし始めていたときだ。
ヨハネスブルグの空港に降り立ったときに包まれた、熱気と人の汗、そして何かが焦げるような香ばしさの混ざった臭いは、その後この国を訪れる度、変わらずに鼻腔を刺激し、僕にとって南アフリカそのものの臭いとなって今も記憶されている 。知り合った友人宅に居候させてもらい、2ヶ月余りの間、僕はタウンシップと呼ばれる黒人居住区に通いながら、ただやみくもに写真を撮り続けた。
「いい写真を撮って、早く一人前のプロとしての第一歩を踏みだしたい…」
今思えば、そんな思いだけに突き動かされていたのだと思う。
(1992年12月)

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