[写真]背表紙ではなく「本のすべてが凝縮されている」という表紙を見せられるのがフェアのポイント

 【北海道・札幌】2008年に北海道初進出を果たした、大手書店チェーン「MARUZEN&ジュンク堂書店」(本社・兵庫県神戸市)。札幌の老舗百貨店「丸井今井南館」の地下2階から地上4階までの6フロア、実に1800坪の面積にあらゆるジャンルの書籍が並んでいます。その数は、北海道の書店でナンバーワンとなる130万冊という蔵書数を誇ります。

 ここまで大型の書店になると、その多くは「背表紙」が正面に来るように並べられてしまいます。それでは、表紙に魅力的な写真があっても、そして中身が充実していたとしても、なかなか手に取ってもらえません。これは、本屋の店員さんにとっても大きなジレンマでした。

1、2か月ごとにフェア企画

[写真]企画した店員の思いが込められている

 そこで、MARUZEN&ジュンク堂書店札幌店では、開店当初から1か月~2か月ごとに、特定のテーマを決めてフェアを開催。ピックアップする本を厳選することで、表紙を前面に押し出し、平積みにするなどして、埋もれた名書や社会の流れに合った書籍にスポットを当てて来ました。

 同店文芸書担当でフェアの広報もしている菊地貴子さんは「フェアについては、店員から積極的に「こういうテーマでやりたい」という意見がたくさん出て来ます。やはり、推していきたい本というのが、各店員で違いますし、フェアで大きく扱ってお客さんに手に取ってもらうことで、店員のモチベーションアップにつながっています」と話します。

 「POPひとつとっても力が入るので、その思いはお客さんにも伝わっています。というのも、フェアで扱った書籍は売り上げのアップが数字として表れるんです。そして、本は表紙にすべてが表現されているので、一番魅力的な部分をアピールできるのもフェアのいいところだと思います」と菊地さん。菊地さん自身、九州出身の作家さんのフェアを企画し、札幌店の売り上げが福岡店の売り上げを上回ったこともあるのだとか。

[写真]手書きのPOPに思いを込める

 「今実施しているフェアの中では『春はほっこり…和菓子で一息フェア』が特におすすめです。和菓子にスポットを当てるフェアはなかなかないので、その切り口も面白いなと思いますし、蔵書数が多い店舗だからこそできるフェアだと自負しています」(菊地さん)というように、日の目を見なかった書籍にもスポットが当たるのも魅力的です。

 そして、取材当日は「本屋大賞」の発表日で、1時間半後には大賞が発表になるタイミング。「19時に大賞が発表になるので、「本屋大賞ノミネートフェア」のレイアウトも、発表と同時に大賞作品が目立つように大幅に入れ替えます」と、社会の流れにも敏感に対応します。

 インターネットが普及したとはいえ、リアルな活字や写真の力はまだまだ健在。本屋の店員さんのアンテナに引っかかった書籍たちにスポットが当たるフェアも、私たちの新たな興味を引き出してくれるに違いありません。

(ライター・橋場了吾)