[写真]グループ5を暴れまわったポルシェ935。なかでも通称モビーディックと呼ばれるこのクルマの印象は強い

 ターボエンジンと聞いて何を思い浮かべるだろうか? 昨今のエンジンの話題ならそれは小排気量ターボということになるだろう。

 だが、筆者のような昔の人は、1970年代後半からのハイパワーターボのイメージがどうしても抜けない。その筆頭に上がるのは一連のレーシングポルシェ。あるいは国産ならターボ化に邁進していた頃の日産車だ。特にスカイラインのRSターボの印象は強い。

 当時のターボといえば、強烈なパワーと引き換えに燃費は劣悪と言っていいほど酷かった。ロータリーターボに至っては飛ばすとリッター3キロなどと言う話が飛び交っていたくらいだ。

 さて、そういう大食らいのターボがいつの間に低燃費エンジンの一方の旗頭になったのかという話を今回はしてみたい。ターボは燃費が悪いというイメージを払拭できないと小排気量ターボモデルが売れない。売れないと日本が世界から置いていかれてしまう。日本の自動車メーカーに頑張って欲しいと願う筆者にとって、そういう誤解を解いていくのは結構大きなテーマなのだ。

 何も小排気量ターボだけが省燃費技術だというつもりはないけれど、それは2015年の今、明らかに世界的トレンドの一つだからだ。日本の得意とするハイブリッドも大事だが、競い合う幾つかの技術の中でどれか一つがブレークスルーによって突然進化することがある。やはりある程度は満遍なくやっておかないと思わぬところで足元をすくわれるのだ。

1980年代の「ターボブーム」

[写真]日産スカイライン2000ターボインタークーラーRS-Xはついに200馬力を超え、ターボRSの登場まで10年にわたって箱スカGT-Rの160馬力を超えられなかった鬱屈を吹き飛ばした

 さて、1980年代のターボブーム時代のことから書き始めよう。エンジンの出力を上げようと思ったら、排気量を上げるのが一番手っ取り早い。エンジンとは燃料を燃やして動力に変換する機械だから、燃料をいっぱいくべればパワーが出る理屈である。インジェクション(電子制御式の燃料噴射装置)の時代になってからは、燃料だけならいくらでも噴射できる。

 ガソリンが燃える時、空気と燃料は化学反応する比率が決まっていて、重量比で14.7:1だ。乱暴に言うと12リッターの空気を1グラム、つまり小さじ1/5のガソリンで燃やすことになる。この比率が動かない以上、空気の取り込み量が燃やせる燃料の量を決めることになる。

 吸気の面からエンジンを見ると、エンジンは吸引ポンプみたいなものだ。ピストンが下がる負圧で注射器の様に空気を吸い込むので、ポンプの容量を上げてやればもっと沢山空気が吸い込める。

 容量の大きいポンプ、つまり大排気量エンジンは、低速から高速までパワーがあり、力の要らない時は極めて静かで、マナーも良い。一度乗ってみるとやめられないくらいに優れているのだ。ではなんで大排気量エンジンが主流にならないのかといえば、それは大きく重いからという極めて当たり前の理由だ。

 適正な燃焼のための気筒毎の排気量は約450ccと言われている。だから排気量を増やすとシリンダーの数も増える。パワーの増強に応じて各部を丈夫に作らなくてはならなくなるから加速度的に重くなる。それはエンジンだけで済まない。重いエンジンを積むためにはシャシーを強化しなくてはならず、そうなればタイヤも太くという具合にどんどん重量増加を呼ぶ。それでは具合が悪い。クルマなんて軽ければ軽いほどいいのだ。

 そこは小さなエンジンの方が有利なのだ。しかし小さいエンジンは空気の吸い込み量が少なくなるのは前述の通りだ。そこで「自分で吸い込めないなら別のポンプで押し込んでやればいいじゃないか」と考えたのがターボエンジンである。元々は空気の薄い高空で飛行機のレシプロエンジンのパワーダウンを防ぐために発展した技術なのだが、1気圧の地上だってそのメリットは十分にある。