阪神が対広島を相手に屈辱の本拠地3連敗を喫して、セ・リーグ最速で20敗を数えてしまった。借金は「5」。私は、借金「5」をひとつのボーダーラインとして考えているので、チームに赤ランプが点滅している状況だ。同一カードの勝ち越しを、5シリーズしてようやく返済となるのだから、最低15試合が必要で、連勝がなければ、返済に1か月はかかることになる。まだ5月と余裕で構えているのではなく、現状に対して首脳陣も選手も大きな危機感を抱かねばならない。

 ここまでチームが波に乗れていない理由は、数字が如実に表している。チーム打率(.227)チーム得点(105点)チーム防御率(4.06)、チーム失点(157点)、チーム盗塁(11)、チーム本塁打(12本)とすべての部門で最下位なのだ。特に、その中でも阪神の攻撃の核である鳥谷、ゴメス、マートンというクリーンナップの形が崩壊してしまっているのが大きな原因だろう。

 この日、ベンチは、マートンをスタメンから外した。体調面も含めて、それぞれの選手に不振の理由はあるのだろう。マートンは、ストライクゾーンの変化に戸惑ってリズムに乗り切れないようだが、そのマートンを外したタイミングにしても何試合か遅かったように思える。そして、代役の新井が3打席連続三振するなど、マートン外しの効果は出なかった。

 ここにきて鳥谷が、やっと調子を上げてきたが、全イニング出場の記録を持つ彼にしても、特別視することは禁物で、ベンチは十分にコミュニケーションをとった上で、チームが勝つためにはどうすればいいのか?という厳しい決断があっても良かったのではなかろうか。前後のサポートがないために4番のゴメスの調子までおかしくなってしまっている。

 ある程度の得点が計算できなければ、ベンチの采配の選択肢も制限されてくる。またそうなってくると、「1点もやれない」と、ピッチャーの心理や配球にも悪影響を及ぼして負のスパイラルに陥ってくる。本来、守り勝つのが阪神のスタイルであったはずが、その長所さえも崩れつつある。

そして大切なことが、野球の基本をおろそかにしているということ。メッセンジャーは、ベースカバーに走らなかった。西岡は、三振した際、キャッチャーが正しくキャッチングできていなかったのに一塁へ走る姿勢を見せなかった。ダブルスチールを許した場面にしても、上本のベースカバーへのポジションも中途半端だった。全力疾走という部分に関しても全員が全員できていない。抽象的な表現にはなってしまうが、外から見ている限り、チームから戦う姿勢が伝わってこない。負けが込むと、得てして、そう見えるものだが、選手とベンチの一体感が欠けているようにも感じる。迷いながらプレーしているように思える。

 試合のマネジメントとは、1試合、3試合、6試合、1か月、3か月、6か月と、様々なビジョンが重なりあってくるものだ。しかし、今の阪神は、その試合、その試合のことしか視野にないように感じる。マートンをスタメンから外すのであれば、先を見据えて、伊藤隼太、中谷といった若い力をスタメンに並べるという策があってもよかったのかもしれない。

 伊藤隼太は、対福井への相性も悪くはなかった。中谷には、まだ甘さが残っているが、1軍で使って揉まねば、彼の良さも引き出されない。チームが、こういう状態だからこそ、首脳陣は、灰色ではなく、シロかクロかという思い切った決断をすべきだろう。チームをリセットさせるには、ベンチの明確なビジョンと決断のスピードが必要になってくる。そして、野球の基本を全員にもう一度、徹底させるという厳しさもいるだろう。
明日、12日からのヤクルト、中日では、完封や4番の一発というものがチームのムードを一変させてくれるのは間違いないだろうが、それ以上に、足元をみつめて、やるべきことをちゃんとやる、という野球を徹底してもらいたい。(文責・掛布雅之/阪神DC、評論家/構成・本郷陽一)