#01 「水不足の影で(その1)」

スラムが密集するムンバイの北部。路面にあいた60センチ四方ほどの穴から、男たちがバケツを片手に、争うように水をかき出していた。地下をとおる上水道のパイプから漏れだした水をポリタンクにつめて持ち帰り、自ら家庭で使ったり、近所に売ったりするという。
この年、商業大都市ムンバイは稀に見る水不足にさらされていた。雨季の降水量が極端に少なかったためだ。インフラが整わないうえに、年々人口が増加する一方のインド。この国の町や村では、雨が多く降れば洪水になり、逆に少なければすぐに水不足に陥ることになる。 しかし、水不足の原因は天候だけではない。英国統治時代につくられた水道管はいまや老朽化し、無数の破損部からは毎日何トンもの水が無駄に漏れ続ける。また、政治的コネをつかって水を横流しし、利をえる水マフィアの存在も数知れない。
(2010年3月)

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