[画像]トヨタがTNGAプロジェクトの一貫でデビューさせた新型エンジンシリーズにもEGRは積極的に取り入れられている。ヴィッツ用1.3リッターユニットの発表に際しては、従来より排気ガスの循環量を増やした「大量EGR」システムが導入された

 最新エンジンの話に頻繁に出てくる言葉がある。それは「EGR」。EGRとはExhaust Gas Recirculationのことで日本語では「排気再循環」と言う。排気ガスをキレイにし、燃費を向上させるという、現在のエンジン設計者が一番何とかしたいポイントを解決してくれる魔法の技術なのだ。

 しかもディーゼルにもガソリンにも無過給にも過給にも効果が期待できる。地味な技術ではあるが、いまやEGRなくしてエンジンは語れない。しかもこの技術は日本が最先端を走っている。クルマ好きならしっかり押さえておくべき技術だ。今回はそのEGRについて書いてみたいと思う。

 いつもの様に概要を説明すると、EGRとは日本語で排気再循環と言う言葉からわかるように、一度排気ガスとして排出されたガスを再度エンジンに取り込む仕組みだ。

 なんでそんなことをするか? その効能は大きく分けて3つある。

(1)再燃焼による排気ガス浄化
(2)吸気負荷の軽減
(3)不活性ガスによる燃焼制御

 これだけ読んで「なるほど」という人はまずいないと思う。これでわかる人は最初から知っている人だ。できる限りわかる様に説明していくので、じっくり読んで欲しい。ではまずはその成り立ちの話から説明していこう。

(1)再燃焼による排気ガス浄化

 EGRという技術ができたのは、排ガス規制をクリアするためだ。自動車の排気ガスの有害成分は主に5つある。

■一酸化炭素(CO)
COは人が吸い込むと血中の酸素を奪い命に関わる。石油ファンヒーターの一酸化炭素中毒の話を思い出してもらえばわかるだろう。

■炭化水素(HC)
炭化水素は平たく言えば燃え残ったガソリンで、光化学スモッグの原因になる。

■煤(PM)
PMは不完全燃焼によって出る煤。特にディーゼルで問題になるが、ガソリンエンジンでも出ている。

■窒素酸化物(NOx)
窒素酸化物は窒素と酸素が結びついたもの。結合する酸素の数が色々なのでxと書くことになっている。これも光化学スモッグの原因となる。

■硫黄酸化物(SOx)
SOxは硫黄の酸化物。このxもNOxと同じ意味だ。硫黄は本来燃料には要らない不純物だ。それが混じるのは主に燃料の精製の問題で、エンジン側ではあまり対処の方法がない。ただ困ったことにSOxは排気ガス中の水にとけて硫酸になるので、クルマの排気系をボロボロにしてしまう。

 これらをよく眺めると最初の3つ、CO、HC、PMが発生するのは「ちゃんと燃えてない」という同じ原因だ。

 一酸化炭素は二酸化炭素(CO2)に対して酸素がひとつ足りないので、もう一度燃焼させてやれば人体に無害な二酸化炭素(ただし温室効果はある)に変えることができる。HCは燃えればH2OとCO2になるし、PMはキレイに燃やせばぐっと減らすことができる。

 そこで一度の燃焼ではちゃんと燃えなかった排気ガスの一部を吸気管に戻して、もう一度燃焼させるのだ。本当は全部をもう一度燃やしたいのだが、排気ガスには酸素がないからそんなことをしたら燃焼しなくなってしまう。だからそうならないように燃焼できるギリギリでコントロールする。要は「全部は無理だけどできるだけ減らす」という考え方だ。

 一方で「全部をちゃんと燃やさないと」という考え方をした人たちもいて、その場合は排気系の中にふたつ目の燃焼場所を作って、ポンプで空気(要するに酸素)を送り込んで燃やそうとした。それがサーマルリアクターだ。こっちは燃えるほど温度を高く保つのが難しいことが問題で、点火を時々わざと失火させたり、空燃比をめちゃくちゃ濃くしたりして、生のガソリンを排気系に送り込み。その生ガスを後で燃えるための燃料に使うという無茶な仕組みだった。おわかりの通り「全部をちゃんと燃やすために一回目ではしっかり燃やさない」という妙な話になり、結局は燃費の悪化を招いて廃れて行った。

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