「経験と勘」頼みの噴火予知

 実は気象庁が発表する「噴火警報レベル」も、なにかの機械で数値を測っていて3.9が4.0になったら数値を上げる、といった科学的・学問的なものではなくて、もっぱらそれぞれの火山の「経験と勘」だけに基づいて決めているものです。

 このため、例えば北海道の有珠山(うすざん)や、長野・群馬県境の浅間山や、鹿児島・桜島のように過去の噴火歴が分かっていて、ホームドクターのような大学の火山学の先生が研究を続けているところでは「経験」が蓄積されています。それゆえ噴火警報レベルも箱根よりは確かなものになっています。しかし、箱根は経験がもっともない火山の一つなのです。

 2014年の御嶽では噴火警報レベル1、つまり山頂まで登山客が行ってもいいという規制のときに噴火して大被害を生んでしまったのでした。

 気象庁としては、もし箱根が噴火警報レベル1のままで噴火したら取り返しがつかない失敗を繰り返すことになる、というので、噴火警報レベルを上げたのでしょう。その「根拠」はあいまいなものですし、大涌谷の周辺300メートルという範囲も、学問的な裏付けがあるものではありません。

 また、気象庁が言っているような「水蒸気噴火」で収まるかどうかも学問的には分からないことなのです。もっとステージが上がってマグマが地表に出てくる「マグマ水蒸気噴火」になる可能性は高くはないとはいえ、それが起きないという学問的な保証はないのです。

 気象庁は天気予報もしている役所だから、同じ「予知」ならば同じように可能だと考える人も多いかもしれません。しかし、噴火予知や地震予知は天気予報とは根本的に違うことがあります。

 それは天気予報は「大気の運動方程式」というものがすでに分かっていることです。それゆえ観測データ、たとえば全国に1200地点以上もあるアメダスの観測データやゾンデ(気象観測用の気球)の観測データを入れれば「未来」が計算できるのです。

 しかし、これと違って噴火予知にも地震予知にも、肝心の方程式はまだ分かっていません。

 そのうえ地表が柔らかい堆積層や柔らかい火山灰に覆われているので、地震や噴火に関係する地下深くにある基盤岩や火山の内部といった深部の岩の中で、どのような歪みやマグマが蓄積されていっているかといったデータはいまだ取れません。これでは天気予報なみの地震予知や噴火予知は出来るはずがないのです。

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