農林水産省は27日、品薄となっているバターを1万トン追加輸入すると発表しました。同省は今年2月に2800トンの輸入を実施していますが、今回はこれを上回る輸入量ということになります。品薄になれば民間事業者がそれぞれ輸入すれば済む話のように思えますが、なぜバターは品薄が放置され、政府が追加輸入するという事態になっているのでしょうか。

[グラフ]バターの国内生産量と輸入量の推移

 バターが品薄になっているのは、バターの原料である生乳を生産する酪農家が減少しているからです。こうしたところに、昨年の猛暑で牛乳の生産量が落ち込んだことなどが重なり、一気に品薄状態となってしまいました。通常の品目であれば、国内の生産量が減少した場合には、海外から輸入されることになるため、よほどのことがない限り品薄になることはありません。ところがバターの場合には、そうはいかない特殊な事情があります。

バタがかかえる特殊な事情とは?

[写真]品薄が続くバター(アフロ)

 日本政府はこれまで基本的に酪農家を保護する政策を取ってきましたが、1993年に妥結した多国間貿易交渉(GATTウルグアイラウンド)によって、毎年一定量の指定乳製品を輸入することになりました。この輸入は、事実上、独立行政法人農畜産業振興機構が一元的に行う仕組みとなっており、各事業者が自由に輸入する体制にはなっていません。バターを輸入する事業者は、あらかじめ機構に登録し、輸入した製品を一旦機構に売り渡します。そして、機構側がマークアップと呼ばれる内外価格調整金を上乗せし、事業者は再び機構からバターを高い価格で買い戻すのです。

 機構は国内の需要動向を見ながら、輸入量を決定するわけですが、所詮はお役所であり、民間事業者のような機動的な判断はできません。このため市場の動きに機構の輸入判断が追い付かず、品不足を招いてきたという面は否定できないでしょう。同じ乳製品でも、チーズや牛乳はこうした取引の対象にはなっていませんから、品不足が発生するようなことはありません。

書類のやり取りだけで多額の利益?

 同機構と農林水産省は、定期的に輸入量の判断を行い、これを事業者に通知することを決定し、2015年については1月、5月、9月に輸入判断を行うとしていました。今回の追加輸入はこれに基づく判断ということになります。

 国内酪農家の保護政策については様々な意見がありますが、同機構がバターを全量引き取り、調整金を上乗せして売り戻すというやり方については疑問の声も上がっています。同機構が、書類のやり取りだけで多額の利益を上げているようにも見えるからです。独立行政法人は所管官庁からの天下りの温床となりかねない存在ですから、その運営には極めて高い透明性が求められます。本当にこのような仕組みが必要なのか、国民に対する明確な説明が必要でしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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