[写真]東京の永青文庫で開催されることになった「春画展」の開催概要を語る細川護煕元首相(Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 イギリスで大盛況を博した「春画展」が今秋、日本でも開かれることが決まりました。本格的な春画展は国内初開催となることや、概要発表会見に細川護煕元首相が登場したことで話題になっています。しかしこの春画展、これまではスポンサー獲得に苦労するなどの苦難を強いられていました。春画は、性器が露骨に描かれているといったこともあり、刑法上の「わいせつ」物にあたる懸念があったためです。 春画は「わいせつ」物なのでしょうか。

愛知県美術館「わいせつ写真に布」の波紋

「わいせつ」の定義とは?

 「わいせつ」とは、抽象的で分かりにくい言葉ですが、判例では「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」とされています(最判昭和32年3月13日 チャタレー事件)。この判断にあたっては、作品の芸術性などの社会的価値も踏まえて全体的・相対的にみて、主として見る者の好色的興味に訴えるものと認められるかどうかを考えます。

 局部にモザイク処理をしたDVDや動画が堂々と世に出回っているため、性器部分が露出しているかどうかがわいせつを判断する基準になっていると誤解されがちですが、そうではありません。たとえ性器部分に処理がされていたとしても、全体としてみて「わいせつ」と認められることもありますし、逆に春画のように性器部分が隠されていないものであっても、「わいせつ」とは言えない場合もあるのです。

かつて「わいせつではない」判例も

 裁判の場で、春画にわいせつ性はないという判断がされたこともあります。成人向け漫画のわいせつ性が争われ、問題となった漫画と比較するために、春画が証拠として提出されたものですが、裁判所は「春画は……著名な浮世絵作家の作品として、あるいは懐古趣味に応える歴史的文物として、興味を抱かせるものであり……専ら読者の好色的興味に訴えるものとはいえない」としました(東京地判平成16年1月13日)。

 しかし、甲南大学法科大学院教授の園田寿弁護士は、「この裁判例は一般論として語られているに過ぎず、あらゆる春画が、わいせつでないと言い切れるわけではありません」と指摘します。どういうことなのでしょうか。「判例は、わいせつに当たるかの判断にあたって、全体としていやらしさを感じさせるものといえるか、また性器の結合部分についてデフォルメされておらず、写実的に描かれているかを重視しています。春画についても様々なものがありますから、あまりデフォルメがされておらず、ポルノとしての側面が強いものが存在する可能性はあります。全体としてわいせつ性があるかどうかは、現物を見た個別的な判断になってくるでしょう」

 春画は浮世絵という芸術だから問題はない、といった単純な話にはならないようです。「ただ、春画は浮世絵という描き方が特徴的な絵画で、写実的な描写の要素は大きくありません。特に、著名な画家の作品ということにもなれば、その芸術性の高さも社会的に承認されていると言えますし、わいせつ性は認められないことが通常だと思います」(園田氏)

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