このところROEを高める方策を打ち出す企業が相次いでいます。その背景には安倍政権が進めるコーポレートガバナンス改革があるといわれています。ROEが向上するとさらなる株価上昇が期待できるのですが、死角はないのでしょうか。

[図]ROEとは株主資本利益率のこと

 ROE(Return On Equity)とは株主資本利益率のことで、企業の自己資本(株主資本)に対する純利益の割合を示しています。ROEが高いということは、株主の持ち物である自己資本を効率良く使って利益を上げていることを意味していますから、株式市場では高く評価されることになります。その結果、ROEが高い企業の株価はそうでない企業と比べて上昇しやすいといわれています。

 これまで日本企業はROEの向上に消極的だったのですが、ここ半年で状況が激変しました。その理由は安倍政権が進めるコーポレートガバナンス改革です。

 安倍政権は成長戦略の一環として、企業のROE向上策を掲げました。東証はこれを受けて、あらたにコーポレートガバナンス・コードを策定。これを適用した新しい上場ルールを今年の6月からスタートさせています。また公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめとする機関投資家も、相次いで企業に対し株主価値の増大を求めることになりました。背景には株価対策や年金財政の改善という狙いがあるともいわれていますが、その理由が何であれ、企業側は株主還元の強化を迫られたわけです。

 ROEを向上させるためには、企業の利益を拡大させる方法と、自己資本を減らす方法の2種類があります。本来は企業の利益が拡大し結果としてROEが上昇するのが望ましいのですが、それを実現するのは大変です。もっとも簡単にROEを向上させる方法は自社株買いや配当などで自己資本を減らすことです。このため多くの企業が増配や自社株買いなどを次々に発表しているというのが今の状況です。

 日本企業は現在、170兆円を超える現金を保有しています。日本国内には有効な投資先がないことが主な原因と考えられます。お金をただ銀行に預けるくらいなら、株主に還元してしまった方が経済効果が高く、株価の上昇も期待できるでしょう。

 しかし、一方では別の見方もできます。企業は本来、グローバルに活動する存在ですから、国内によい投資先がなければ海外市場を開拓するのが本来の姿といえます。またベンチャー企業などに投資し、国内に新しい市場を開拓するという方法もあります。今後、人口減少などで日本の国力は低下する一方ですから、本来であれば、日本企業はもっと積極的に海外投資や新規事業投資を行っていてもおかしくありません。こうしたリスクを取ることができないので安易に自社株買いをしているのだとすると、それは少々本末転倒かもしれません。

(The Capital Tribune Japan)

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします