世界最高水準の教育・研究を行う「卓越大学院」構想が政府内部で進められています。たいそうな名称なのですが、これはどのような教育機関なのでしょうか。

 卓越大学院構想は、大学院教育のあり方を議論している文部科学省の中央教育審議会(中教審)大学院部会で、素案のとりまとめが行われており、先月末に閣議決定された新しい成長戦略にも盛り込まれました。

[図]卓越大学院のイメージ(2014年12月の産業競争力会議、配布資料から)

 中教審が示したたたき台によると、日本は国際競争に勝ち抜くため、世界最高水準の教育力と研究力を備えた大学院群を形成し、人材育成・登用システムの再構築を図る必要があると指摘しています。これを実現するためのプログラムが「卓越大学院」ということになります。

 具体的には、各大学の研究機関や民間の研究機関のリソースを組み合わせ、修士課程と博士課程を組み合わせた5年間のプログラムを構築します。また、教員を国際公募し、年俸制を採用するなど、従来にはない教育体制を確保し、若手にとって魅力的な教育・研究環境を整備します。卒業後の生活の不安がないよう、雇用などの面についても手厚い支援を行うとしています。

 具体的な研究分野としては、(1)国内外の研究をリードし、ノーベル賞等の受賞が期待できる領域、(2)ICTをベースにした文理融合や学際領域など日本が今後、世界で勝たなければならない領域、(3)システム化、統合化の科学や金融・保険等、新領域や新産業の創出に資する領域の3つが列挙されました。

 たたき台には、挑戦性、総合性、融合性、国際性といった華々しい文言が並んでいますが、修士・博士の一貫教育プログラムという点以外には、従来の教育システムとの際だった違いは見受けられません。また、本当に革新的な研究というものは偶然から生まれたり、既存の枠組みでは予想もしなかった分野から出現することが多いという現実があります。「日本が世界で勝つべき分野」という形で領域を絞ることが、成果に結び付くのかについては、議論の対象となりそうです。

 改革案の根底には、優秀な若者が博士課程に進学せず、これが国際競争力の低下につながっているとの認識があります。一連の施策は、卒業後の就職支援を手厚くし、優秀な若者を惹きつけようという戦略と考えられます。ただ、米国などを見ると、大学の研究者は日本よりもさらに生活が不安定であり、数少ないポストを目指して必死に努力することで高い成果が生まれているという面も否定できません。身分を保障することで本当に卓越した成果が得られるのかについても、やはり議論を重ねる必要があるでしょう。

(The Capital Tribune Japan)