1年に1度、何となく気になるニュースがある。宇都宮市と静岡県浜松市のギョウザ消費額日本一対決だ。浜松市民の有志は10年前からご当地B級グルメ「浜松餃子」をPR。2011年度の総務省の家計調査で、王者・宇都宮を上回って日本一ギョウザを食べる町の栄冠を手にし、その後も毎年トップ争いを続けている。なのに、市民からは「日本一の実感はないね」と冷ややかな声も目立つ。現場を取材すると、栄光のイメージとは異なる悲しさが漂っていた。

地元から「ウナギがかわいそう」

[写真]浜松餃子について語る大場豊さん

 浜松市内のギョウザ店のマップを作り、PRの先頭に立つ市民グループ「浜松餃子学会」。その事務局を担う大場豊さん(47)は、眉間にしわを寄せて打ち明けた。「市民からは『ウナギがかわいそうじゃん』とも言われます」

 ウナギは、浜松市の西側に広がる浜名湖で明治時代から養殖される名産品。夜のお菓子「うなぎパイ」のルーツにもなった。しかし、養殖に使われる稚魚「シラスウナギ」の漁獲量は減少が続き、2010年から極度の不漁が連続。浜松のうなぎ店や養殖業者は苦境に立たされた。

 そんなときに目立ってきたのが、浜松餃子だ。2007年、浜松餃子学会は記者会見を開き、市と行った独自調査を根拠に1世帯あたりのギョウザの消費額日本一を宣言。「第2回B-1グランプリ」にも出場し、メディアに大きく取り上げられた。それが、一部の市民には「ウナギがだめになってきたから、ギョウザを売り込もうとしている」と映った。

 「浜松はまずはウナギ、ギョウザはサブでいい。僕たちは、市民さえ知らなかった長い歴史を持つ浜松餃子の食文化を根付かせ、町おこしをしたいだけなんです」と大場さん。活動が地元で歓迎されなくても、ギョウザに愛情を注ぎ続けた。

 大場さんの語り口は穏やかなのに、熱かった。嫌われる覚悟で「市民は冷ややかですよね」なんて聞いたのに、声を荒げることもなく初対面の筆者に実情を話してくれる。皮の包み方一つで味わいが変わるギョウザの奥深さも力説し、家族経営の小規模店に後継者が戻ってきたと嬉しそうに語る。取材が1時間半を超えたころ、「俺も結構、話すもんだな」と照れくさそうに笑っていた。

 学会のメンバーはギョウザ店主ではなく、ギョウザ好き、浜松好きの人たちだ。ご当地グルメのまちおこしは、「自分の利益のために活動していると思われると、仲間が広がらない」と考えて、飲食店主らが中心にならないのがセオリー。だからこそ、自由で遊び心のある取り組みが生まれる。全国のギョウザの町おこし団体を集めた全国餃子サミットでは、SPやインカムを用意する国際会議さながらの演出で注目を浴びた。

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