試合後にはすっかり声を枯らしていた槙野(写真:アフロスポーツ)

「待て! 追わなくていい!」
 ボールを保持する韓国のディフェンスラインに対し、プレスを掛けに行こうとしたセンターフォワードの興梠慎三に、後方の槙野智章から指示が飛ぶ。振り返った興梠は、後ろの選手たちが自分に付いて来ていないことを確認すると、自陣に戻って中盤の柴崎岳や山口蛍に近いポジションを取り直した――。
 初戦の北朝鮮戦で、身長190センチのFWパク・ヒョンイルに空中戦で競り負けて逆転負けした日本にとって、2戦目の韓国戦は“追試”のようなゲームだった。

「同じ失点はやってはならないと思っていましたし、同じような相手がまた来るのは試されていると思いました。逆にこれはチャンスだなと」

 すっかり枯れた声でそう振り返ったのは、初戦で苦い思いを味わった槙野だ。北朝鮮よりも選手個々のクオリティが高く、それでいて、同じように身長196センチのFWキム・シンウク擁する韓国の攻撃陣をどう抑えるか――。それが、この試合の焦点のひとつだったのは間違いない。

「守備ブロックを築く位置を3つぐらい用意していたんです」
 初戦に続いて右サイドバックとして先発出場した遠藤航は、そう明かした。もともとハリルジャパンは「縦に速い攻撃」を志向している。本来なら、高い位置でプレッシャーをかけてボールを奪い取り、相手が守備の陣形を整えていないうちに、ショートカウンターを仕掛けて仕留めたい。

 だが、35度を超す猛暑のなか、選手たちのコンディションも万全とは言えない状況でそれが難しいのは北朝鮮戦で明らかだ。そこでまずは韓国の攻撃をしっかり食い止めることに重きを置き、試合状況に応じて守備ブロックの位置を変えながら対応したのだ。

 その際、生命線となったのが、ピッチ上における選手同士のコミュニケーションだった。
 初戦と2戦目のインターバルはわずか2日。その間、映像を用いたミーティングは入念に行なわれたものの、練習はコンディション調整や疲労回復がメインで、戦術的なトレーニングを行なう余裕は一切なかった。チームとしての共通意識をトレーニングで植えつけられない以上、ピッチ上で解決するしかない。

「“行けるところ行けないところを自分たちで判断しろ”と監督から言われていました」と遠藤が言えば、センターバックの森重真人も「相手が良いリズムでボールを持つシーンがあって、そこは割り切って、じゃあどこにブロックを作るのか。そこは試合前から決めるのではなく、自分たちの体力や試合展開を見ながら決めて、今日はそういうゾーンでしっかりブロックを作ることができたと思います」と明かした。