環太平洋経済連携協定(TPP)の著作権条項をめぐり、著作権保護期間の切れた文学作品をインターネット上で無料公開している「青空文庫」の存在が揺れている。日本では作家の没後50年とされてきた著作権の保護期間が70年に延長される可能性が高まっており、公開できる作品が大幅に狭まるのではないかとの懸念があるためだ。もし保護期間が今より20年延長されたら、「青空文庫」はどうなってしまうのか。

「文化共有のあり方に制限」と運営者

 青空文庫は、「本を電子化して誰でも読めるように」とのコンセプトで1997年7月に開設されたウェブサイト。著作権保護期間が切れた作品を中心に1万3千以上の作品が公開されており、サイト上や電子書籍、スマートフォンやタブレット端末などで無料で気軽に日本文学に触れることができるものとして、国内外で高い支持を集めてきた。

 高校生のときから17年間、ボランティアとして青空文庫の運営に関わっているという翻訳家の大久保ゆうさん(33)は、著作権の保護期間延長が青空文庫に与える影響をこう語る。「(青空文庫は)在外邦人や、日本に興味を持つ海外の方々にとっても大事な読書・研究リソースとなっており、国内のみならず海外も含めて、貴重な文化的財産を国際的に共有してきた。著作権法改正の方向性によっては、こうした文化共有のあり方がかなり制限されてしまうことになる」

三島由紀夫作品の公開は2021年→2041年に?

もし年内にTPPが国際的に合意され、発効まで2年ほどかかると仮定した場合に公開が20年延長される可能性のある作家

 保護期間の20年延長で、青空文庫はどう変わるのか。すでに公開されている作品については、法の不遡及原則から影響を受ける可能性は低いとされる。しかし、青空文庫では条約発効後の20年の間、新たに著作権保護期間の切れるはずだった作家が追加できないことになる。

 図は、もし年内にTPPが国際的に合意され、発効まで2年ほどかかると仮定した場合、どの作家の作品から著作権保護期間が延期されるかを示したものだ。1965年没で2016年に著作権保護期限の切れる江戸川乱歩や谷崎潤一郎は公開できる可能性が高く、66年没で2017年に保護期限を迎える亀井勝一郎の作品も公開可能かもしれないが、その先は不透明だ。2018年には山本周五郎、2021年には三島由紀夫(70年没)、2022年には志賀直哉(71年没)、2023年には川端康成(72年没)の著作が青空文庫で読めたはずが、もう20年待たなければならないことになる。例えば三島由紀夫の場合なら、青空文庫で読むには2041年まで待つ必要がある。