[写真]中国人民解放軍(ロイター/アフロ)

 世界には日本とは異なる価値観に基づいて行動する国があります。共産党による一党支配体制が続く中国はその一例です。中国の軍隊である人民解放軍(以下、中国軍)は、中国共産党の「絶対的指導」を受けています。2003年、中国共産党は中国軍の法規である「人民解放軍政治工作条例」を改定しました。新しい条例では「輿論戦、心理戦及び法律戦を展開し、敵軍の瓦解工作を展開」することが明記されています。

 輿論戦(以下、世論戦)は国内外の世論に訴える活動、心理戦は相手の心を揺さぶる活動、法律戦は行動の正当性を主張するための法的根拠を整える活動です。この3つの活動を、通称「三戦」(さんせん)と呼びます。三戦は単に中国軍だけによって行われるのではなく、中国の政治や外交などの各分野にも通じる深遠な活動でもあります。

世論戦:国内外の世論に訴える

[図表1]中国の「三戦」

 世論戦は、中国の行動に対する国内外の支持を築くべく、国内外の世論に影響を与えることを目的としています(図表1参照)。具体的には、自分にとって有利な情報を発信し、不利な情報の発信は抑えるという「情報管理」などの手法がとられます。

 例えば、尖閣諸島に関する報道です。尖閣諸島は日本固有の領土であり、海上保安庁も常時警戒に当たっています。しかし、2012年9月、中国国営の新華社通信は、尖閣諸島の魚釣島沖を航行する中国の巡視船の写真を掲載した上で、中国側が監視活動と法執行をした旨、英文記事にて全世界に発信しました(図表2参照)。

 中国が尖閣諸島において主権を行使しているかのような印象を与えるこうした報道は、特に国際社会において尖閣諸島が中国領であることを支持する世論を醸成するためのものです。現在、領有権に関する中国の主張が国際社会に受け入れられているかどうかは別問題として、海外の報道や論文では、尖閣諸島の日本名と中国名が「Senkaku / Diaoyu」というように併記されるようになってきています。