朝鮮半島の非武装地帯(DMZ)で地雷が爆発したことに端を発した韓国と北朝鮮の軍事的緊張は、43時間にわたる南北高官会談で合意に達し、軍事衝突は回避されました。しかし、南北の対立はこれで緩和されていくのでしょうか。「コリア・レポート」編集長の辺真一氏が解説します。

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何一つ成果のなかった北朝鮮

[写真]南北境界線では緊張が続いたが、マラソン会談の末、軍事衝突は回避された(ロイター/アフロ)

 韓国軍兵士が負傷を負った8月4日の「地雷事件」は「北朝鮮の仕業」と断定した韓国軍が報復措置として大型拡声器による金正恩体制批判放送を11年ぶりに再開し、これに北朝鮮が反発し、砲弾を撃ち込んだことから一触即発の状態となりました。

 この南北のチキンレースは北朝鮮が折れ、「遺憾の意」を表明したことで収拾の方向にありますが、韓国は北朝鮮から実質的に謝罪の言質を取りつけたこと、また北朝鮮には拡声器が有効であることがわかったことが大きな成果となっています。一方の北朝鮮は完敗に終わったと言っても過言ではありません。何一つ成果を得ることができなかったからです。

 第一に、拡声器放送を中止させたものの完全に撤去させることができなかったことです。そもそも「魚雷事件」を引き起こさなければ韓国が拡声器を持ち出すこともなかったし、「遺憾の意」を表明する屈辱を味わうこともありませんでした。次に、今回の合意で韓国の民間団体の宣伝ビラを止めさせることができなかったことです。最後に、譲歩したにもかかわらず経済制裁解除の実利も手にできなかったことです。

乗り越えなければならない関門

 しかし、これで南北の争いに決着がついたわけではありません。第2ラウンドがあります。

 確かに南北は対決から一転対話のモードに入りましたが、南北が和解するには幾つか乗り越えなければならない障害があります。

 一つは、経済制裁のきっかけとなった5年前の「哨戒艦撃沈事件」と「延坪島砲撃事件」の扱いです。韓国は謝罪なくして、制裁は解除できないとの立場を堅持しています。

 次に、北朝鮮が再三中止を求めている米韓合同軍事演習の問題です。

 米韓は毎年春と夏に大規模の合同訓練を実施しています。夏の「乙支フリーダムガーディア」は8月28日で終了しますが、半年後にまた米韓合同演習が実施されます。北朝鮮が対抗措置を取れば、また、南北がにらみ合うという状況が再現されることになります。

 三つめは、民間団体や脱北団体による風船ビラの問題です。

 今回の合意ではビラについては言及がありませんでした。北朝鮮はビラも心理戦の一環として猛烈に反対しています。現に昨年10月にはビラに向け対空銃を発射し、数発が韓国側に着弾しました。韓国政府が規制するのかどうか、北朝鮮は注視しています。

 最後に、南北和解の最大の障害となっている北朝鮮のミサイルと核の扱いです。