日本らしい自動車デザインとは何か。これまで日本メーカーがさまざまな手法で模索してきました。マツダは2010年にブランド戦略の一環として「魂動」という自動車デザインのテーマを発表。野生動物の躍動感に着想を得たこのコンセプトは、2012年発売のCX-5を皮切りに、同社ラインナップのデザインに導入されてきました。ここでは、モータージャーナリストの池田直渡氏が、マツダの魂動デザインへの取り組みを通して日本オリジナルのデザインについて探ります。

【写真特集】日本の風景に溶け合う自動車デザイン

日本メーカーの一つの悲願

[写真]マツダが長年に渡って挑み続けてきた「和」をテーマとしたデザインの到達点の一つであるアテンザ(撮影:小池義弘)

 日本の自動車メーカーには昔から一つの悲願がある。それは「自動車デザインにおける日本オリジン」の追求だ。自動車は19世紀に欧州で生まれ、北米で育った。二つの自動車文明は相互に多大な影響を与えながら発達してきた。

 日本の自動車メーカーは、欧米の自動車を見ながら成長し、1980年代にようやく欧米と同じ土俵に立つまでに至った。メカニズムもデザインも模倣からスタートしたが、日本がそれを卑下する必要は全くない。欧州と北米も互いに模倣しあって来たという意味では日本と何ら変わらない。

 自動車の起源として、かつて「自動車とはメルセデス・ベンツのことであり、それ以外は“自動車のようなもの”である」とまで言われたベンツですら、アメリカ車に「羽」が生えれば、すかさずそのデザインを取り入れた。模倣と言って聞こえが悪いなら、それはトレンドの導入だ。

「日本らしさ」への挑戦

[写真]工房で槌を振るう職人の向こうに見えるアテンザの造形(撮影:小池義弘)

 しかし、日本のデザイナーの心の奥底にずっと沈殿する澱(おり)として、日本車が発信する日本らしいデザインとは何なのかという拭えない思いはあり続けたのである。特に、日本の自動車メーカーが世界最先端の一角に躍り出た1980年代後半以降はその思いが強い。

 日産は初代シーマで仏像の優美な曲面を取り入れたと主張したが、残念ながらそれは単発で、新しいムーブメントには育って行かなかった。

 マツダは、CX-5を皮切りに、「魂動デザイン」として全てのクルマのデザインを一つの方向性にまとめ始めた。好き嫌いは個人差があると思うが、そこには日本オリジナルのデザインへの挑戦が息づいている。

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします