東京五輪組織委員会は1日、佐野研二郎氏がデザインした五輪とパラリンピック公式エンブレムの白紙撤回を発表した。同日行われた会見では、一転して取り下げに至った経緯や理由、1か月以上にわたった混乱の責任の所在などについて質問が飛んだ。

以下はその全文。

【中継アーカイブ】東京五輪エンブレム問題で組織委員会が会見

展示会は見に行ったがポスターは覚えていない

[写真]五輪エンブレムの盗作疑惑について「全くの事実無根」と否定する佐野研二郎氏。写真は8月5日の会見(田村翔/アフロスポーツ)

司会:大変長らくお待たせしました。東京2020、エンブレムに関する記者会見を始めます。会見者は東京2020組織委員会事務総長の武藤敏郎です。マーケティング局長の槙英俊が陪席しております。それではまず事務総長からお話をいたします。お願いします。

武藤:本日はご多忙中、お集まりいただきましてありがとうございました。東京2020大会のエンブレムにつきましては、去る金曜日、8月の28日にここで会見をさせていただきました。そのとき申し上げたとおり、ベルギーのリエージュの劇場のロゴと東京大会のエンブレムの違いについて、われわれはいろいろご説明してきましたけれども、そもそも佐野さんのつくられたものが、リエージュのロゴとははっきりと違うということを申し上げるというために、最初の佐野さんの当初案ですね。審査委員会で1等ということになった案を皆さま方に発表いたしました。それがいろいろな観点から、IOCの通常の手続き、すなわち世界中の商標登録と問題がないかどうかというチェックにかけられた結果、似たようなロゴがあると、このままでは適当でないと。なんらかの対処をすべきであるという話がありましたので、われわれはこれを修正するということにいたしまして、第1次修正案、それを組織委員会がチェックいたしまして、さらに最終案にしたと。それが今まで皆さま方にご覧いただいていたオリンピックのロゴでありました。

 それをご覧いただいてお分かりいただけたと思いますけれども、ベルギーのリエージュのロゴとはコンセプトも違うし、もちろん子細に見れば似ているところもあるんですけれども、似てないところもたくさんあり、まったく違うものであるということをお話しし、この点については私はご理解を得たというふうに思っております。そういう意味で8月の28日までわれわれはベルギーのロゴとの関係においては、まったく問題がないということを申し上げ続けてまいりました。

 翌土曜日に一部、佐野さんの案の展開例ですね。展開性を説明するための写真に、流用されたのではないかという指摘がなされました。それから翌日曜日、今度はそもそも一番最初の佐野さんの案によく似たロゴがあると。これはヤン・チヒョルトさんというドイツのタイポグラファーの展覧会でよく似たものがあるというご指摘がありました。で、私どももそれを見て、まったく違った新たな事態が起こったという風に認識をいたしまして、まずご本人から、佐野さんご本人からお話を聞く必要があるだろうというふうに月曜日ですね。きのう、判断いたしました。

 同時に審査委員会の皆さま方にも、これは佐野さんを1等として選んだ皆さん方でありますので、その方々にも意見を聞こうということで、現実にお集まりいただいたのは委員長の永井先生だけなんですけれども、今日午前中に佐野さん、それから永井さん、私ども、若干お付きの人もいるわけですけれども、話し合う機会を持ちました。

 で、佐野さんからは、まず展開例に使った写真というものは、もともと応募したときに、審査委員会の内部仕様のためにあれを作ったんだと。ところが同じものが7月24日、公式エンブレムとして発表されるときにそれが使われたわけですけれども、審査委員会のクローズドな場では、これはデザイナーとしてはよくある話なんだそうでございますが、それが公になるときには権利者の了解なりなんなりが必要だというのは、これが当然のルールでありますけれども、それを怠ったと。それは不注意でありましたと。で、24日にそういうことだったもんですから、8月の28日の記者会見でも、いったん公開されたものですから、当然それは扱えるだろうという判断で使われたということであります。佐野さんはそういうことでございますけれども、組織委員会としてもその辺りは重々ご注意を申し上げるべきではなかったかということは反省いたしますけれども、そういう経緯でございました。それで、佐野さんのお話によれば、その権利者に事後的ではありますけれども、了解っていいますか、どうしたらいいかということをお話をさせていただいておりますというご説明でありました。

 それからヤン・チヒョルト展におきますポスター、バナーにつきましては、佐野さんは確かに見に行きましたと。しかしポスター、バナーというのがどういうものであったかは記憶にありません。自分は同時にあのデザインを作りましたと。で、今、見てみると確かに丸い円が、Tの字の右下にありますけれども、あのポスターのほうはドットっていうことですね。Tドット。で、佐野さんのは日の丸であるとか、鼓動であるとか、情熱であるとかといったようなもの、もろもろをイメージしながらTの隣接して付けたものであり、色も違いますと。これは摸倣ではないと。私はまったく摸倣はしてませんと。自分のオリジナルであるという風に思っていますということでありました。

 永井審査委員長は、私はこれについてどういう風にお考えになりますかと伺ったところ、デザイン界の理解としては、そのように、佐野さんの9分割されたデザインの基本、それはピリオドとはまったく違うものであるので、違うものと認識できる、十分できるものであって、佐野さんの言うとおり、これは佐野さんのオリジナルなものとして認識されると自分は思いますと。デザイン界としてはそういう理解でありますということでありましたが、同時にここまでいろいろな形で問題になったときに、一般の国民の方々が今のような説明で本当に納得されるかどうかということについては現状、問題があるかもしれませんと。これは永井さん自身のお話でありました。

 残念ながら自分のこのような説明、それから佐野さんの説明は専門家の間では十分分かり合えるんだけれども、一般国民には分かりにくい。残念ながら分かりにくいですね、という話がありました。

 われわれ組織委員会としては、佐野さんのその原案が摸倣でないということに対する専門的な説明、これは私どもは専門家ではありませんので、そういうことに対する判断する立場にはありません。専門家の判断を「了」として、そのように理解いたしました。