誤差やノイズが多いGPSデータ

 国土地理院がこのGPSを使った測定でもくろんだものは地殻変動の監視でした。時々刻々、その測量点の位置が正確にわかるということは地震予知のために役立つのではないか、というのが目的でした。

 しかし、実際にやってみるといろいろ難しいことが分かってきました。最大の問題は、「誤差やノイズ(観測データの雑音)」でした。測定そのものは精度よくできても、その測定に誤差やノイズがあったら、精密な測定の意味がありません。

 最大の誤差は、空気中の水蒸気量によるものです。この水蒸気量によって電波が伝わる速さが変わり、測定結果が変動してしまうのです。空気中の水蒸気量はしょっちゅう変動します。しかしこれは大気全部の湿度の積分値ですから精密に知ることはできません。このため測定した結果には補正できないノイズが乗ってしまうのです。

 また、本来は地下にある基盤岩のなかの歪みを測ることが目的のはずなのですが、GPS受信器が置いてあるのは地表です。このため基盤岩の上に、首都圏など厚いところでは数キロメートルもの柔らかい堆積層があり、その上で測っていることになります。

 そしてこの堆積層のなかの地下水の影響が厄介なのです。地下水の動きや岩の間にある地下水の増減によってGPSデータが変化してしまいます。地下水は水や温泉の人工的な汲み上げがずいぶん遠くまで影響することもあり、雨が降っても気圧が上下しても変化してしまうものなのです。

 もちろん雨の量や気圧は測られていますから、原理としては補正ができないわけではありません。しかし困ったことに、雨はすぐに地下水に影響するだけではなくて、降ってからしばらくたってから、ときには何日もたってから影響することもあるのです。

「地震の前兆」ほとんどがノイズ?

 ところでMEGA地震予測は、この他人のデータであるGPS測定の結果を、その制約もノイズも知らないで使っているようです。彼らが来るべき地震の前兆として主張しているGPS測定の結果は、ほぼ全部がノイズだといって間違いではありません。

 たとえば2015年4月に起きて1万人もの犠牲者を生んだネパール大地震(マグニチュード=M7.8)を予知したと公称していますが、その前に出たという10センチほどの「地殻変動信号」は本当の地殻変動ではなく、明らかにノイズです。

 彼らは発表していませんが、ラサ(チベット)だけではなく、つくば(日本)、南鳥島(日本)、ユジノサハリンスク(ロシア)、水原市(韓国)などでも、ラサの異常と同じ日に同じような異常値が得られていました。

 こんなあちこちの同じ大きさの「変化」から地震が起きる場所をラサ近辺だけに特定することはもちろん不可能ですし、どこかで地震が起きるとしても、地震の規模から考えれば、これほど広い範囲で同じ大きさの「前兆」が出ることはありえません。

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